2017 年 41 巻 6+ 号 p. 15-18
絵画画像を対象にして,画面上の色彩変化の大きさ(波長)に対し,色変化の大きさを対応させる「波長分析」としてHaar基底などの完全正規直交系を用いて,その展開係数をもとに色変化の強度を求め,絵画画像の色彩変化の特徴を計量的にとらえることを試みてきた.Haar基底のような階段関数系は色変化の強度を1波長の中の平均色差に類似した量ととらえられる一方で,画面を均等に分割することにより,何等かの意味でひとまとまりとしてとらえるべき色変化を分割して計量してしまうことにつながる.そこで,画面の分割方法の自由度について検討を行ってきた.Haar基底のような2等分ではなく,再帰的に3等分する基底系を考案するなどしてきたが,均等な分割での限界は明らかであり,本研究では任意の分割を許容する2次元の基底系を作ることを検討し,離散COS変換やHaar基底と比較した.結果として絵画画像のタッチ等をより明確に捉えることができることがわかった.