2019 年 43 巻 3+ 号 p. 9-
素材表面に感じる光沢感は,その素材で構成されている製品や空間の視覚的評価に大きな影響を持つ.しかし,光沢感は素材の特性だけで決まるものではなく,観察する際の照明条件によっても変わってくる.そこで,本研究では,面光源下と点光源下における光沢感の違いを明らかにすることを目的として,光沢感の主観評価実験を行った.鏡面光沢度や明度の異なる球体試料11種の光沢感を,面光源と点光源の下で被験者30名に評価させた.その結果,面光源・点光源とも,鏡面光沢度が高くなり,明度が低くなるほど,光沢感が高くなる傾向が見られたが,
(1)面光源下と比較して,点光源下では,高光沢の表面のみ光沢感が増す(光沢比強調効果).
(2)点光源下では,高光沢表面の明度による光沢感の感じ方の違いを抑える効果がある(光沢平滑化効果).
ということがわかった.実験ではさらに,低光沢と高光沢の試料について,高級感,硬軟感,温冷感,軽重感,新旧感などの光沢感情を評価させたが,
(3)点光源下の方がその光沢感情の違い(特に硬軟感・温冷感.高光沢試料ほど硬く,冷たい)が明確になった.
これらの知見は,商品や空間を演出する際の照明設計の指針となる.