抄録
わが国では超高齢社会を迎え、高齢の免許保有者の増加に伴う自動車交通事故リスクの増大が懸念されている。高齢運転者の認知症や認知機能の障害は安全運転を阻害し、認知機能は加齢とともに低下するため、わが国では、認知症の疑いのある高齢運転者集団へのハイリスクストラテジーの対策が重点的に講じられている。
本論では、全国規模の高齢運転者集団を対象としたコホート研究など先行研究の知見を踏まえ、公衆衛生学の予防の概念、および心理学における交通事故リスク低減の階層的行動制御の考え方を背景に、交通事故リスク低減の人間行動を整理し、高齢運転者事故予防の展望を論じる。