抄録
肘頭骨折に対するtension band wiring法(以下,TBW法)は優れた手術方法であるが,Kirshner鋼線の移動・逸脱に伴う皮膚の症状,固定力の不足や稀ではあるが神経血管障害や前腕の回内外制限といった問題が報告されてきた.
今回,リングピンを用いてTBW法で治療を行った肘頭骨折25例について骨癒合,術後臨床成績,X線評価を検討した.
結果,25例中23例に骨癒合を認め,最終診察時の平均可動域は屈曲134.2° ,伸展-4.2° でMayo elbow performance scoreは平均97.2点と良好だった.また,経過中back outを起こさず,整復位を保持することが可能であった.
本法は尺骨の髄内に挿入するため,前方皮質骨を貫通することによって起こりうる神経血管障害や前腕の回旋障害といった合併症を起こす可能性はなく,良好な成績が得られ有用な方法と考えられる.