抄録
血液透析患者シャント肢での駆血帯使用はシャント不全リスクのため従来禁忌とされているが,未使用下の手術は出血により難渋する.今回シャント肢に生じた上腕骨遠位端関節内粉砕骨折に対し長時間駆血下手術にも関わらずシャント不全を回避し得た症例を経験したので報告する.症例は63歳女性,転倒しシャント肢である左肘関節を受傷.左上腕骨遠位端coronal shear fracture(Dubberley分類type3A)を認め,受傷9日後に全身麻酔下にEsmarch駆血帯未使用で駆血施行後に骨折観血的手術を実施した.駆血時間は計2時間40分だったが合併症を生じず,術後1年時の日整会-日肘会肘機能スコアは96点であり経過良好である.シャント肢の駆血帯使用下の上肢手術報告の多くは短時間の手術だが,本症例は長時間駆血にも関わらず駆血法の工夫により合併症なく手術可能であった.