抄録
【緒言】肘頭付着部石灰沈着性腱炎を伴った上腕三頭筋腱不全断裂に対する再建術の1例を経験した.【症例】38歳,女性.当科受診の5年前より右肘痛を自覚し近医でステロイド剤注射を数度行われた.当科受診時,疼痛は VAS 6/10,肘伸展力は健側比29%,DASH score 39.7,単純X線での石灰沈着とともにMRI では上腕三頭筋遠位の部分断裂を認めた.【結果】上腕三頭筋腱は黄色変性し一部断裂していた.変性部分と石灰を切除し腱の縫合可能な部分は縫合して人工靭帯を三頭筋遠位に Krackow 法で縫合し,遠位は肘頭に骨孔を作成して縫着した.術後4か月で疼痛は消失し,肘伸展力は91%,DASH score 0であった.【考察】上腕三頭筋腱の皮下断裂は急性発症の報告が多く,石灰沈着性腱炎による慢性発症の報告は稀である.石灰沈着に加えステロイド剤注射により腱の変性を助長し発症したものと考える.