日本肘関節学会雑誌
Online ISSN : 2434-2262
Print ISSN : 1349-7324
Ⅲ. 外傷・外傷合併症
橈骨頭骨端核出現前に受傷した橈骨近位骨端線損傷変形癒合の長期経過観察例
頭川 峰志長田 龍介廣川 達郎
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2022 年 29 巻 2 号 p. 66-68

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抄録

 3歳女児.遊具より転落し受傷し前医でギプス固定を3週間受けた.ギプス除去後,可動域制限があり当科紹介となった.伸展-10° 屈曲110° 回外90° 回内30° であり屈曲・回内の制限を認めた.X線では転位のない尺骨近位骨折,上腕骨小頭と橈骨頭の不適合が見られたが橈骨頭の骨端核はまだ見られなかった.MRIでは傾斜角75° 転位した橈骨近位骨端線損傷を認めた.変形癒合と考え,家族と相談のうえ経過観察を行った.経時的に可動域は改善し,X線で骨端核は明瞭化,傾斜角の改善を認めた.10歳で疼痛なく伸展0° 屈曲125° 回外90° 回内60° であり日常生活に支障はなく,橈骨頚部の肥厚を認めるが骨頭壊死や骨端線早期閉鎖は生じていない.陳旧例の報告では近位橈尺関節癒合や骨端線早期閉鎖の合併症もあり矯正骨切りを行うかは意見が分かれるが,本例では手術加療の介入も念頭に置き経過観察を行ったが追加手術は要さなかった.

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© 2022 日本肘関節学会
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