抄録
遠位上腕二頭筋腱断裂は比較的稀な外傷である.当科で手術を施行した遠位上腕二頭筋腱断裂の2 症例を経験したので報告する.症例1 は47 歳男性である.バレーボール中に右手をついて受傷した.上腕二頭筋完全断裂と診断し,術後17 日目に手術を施行した.Double incision 法を用い,Krackow 法で腱断端に高強度糸を2 本通した後,橈骨粗面にPull-out 法で固定した.症例2 は49 歳男性で,ステロイド内服加療中であった.重量物を持った際に異音がして右肘痛が出現し,近医で遠位上腕二頭筋腱の完全断裂と診断された.保存的加療をうけた後に当科を紹介,受傷後64 日目に手術を施行した.腱の短縮が強く1 次修復が困難であったため長掌筋腱を用い,症例1 と同様の方法で修復を行った.両症例ともに術後経過は良好で,筋力もMMT5 まで回復し現職に復帰した.遠位上腕二頭筋腱断裂に対するDouble incison 法を用いた修復は,新鮮例,陳旧例を問わず強固な固定が可能な有用な方法である.