近年,自然環境を対象とした心理学研究が数多く行われるようになってきた。自然を対象とした心理学研究は主に,a)自然風景に対する好みについての研究,b)自然との心理的つながりと,環境保護など関連行動・態度との関係についての研究,c)自然体験による心身面への影響についての研究,の3つに大別することができる。自然風景に対する好みの研究は,自然を対象とした心理学研究の中では比較的古くから行われてきた。これらの研究では,人々の自然風景に対する好みには何らかの生得的基礎があると説明されることが多い。自然との心理的つながりは,ここ数年注目されるようになってきた新しい概念である。自然体験による心身への影響としては,精神疲労の回復やストレス低減といった回復効果が注目を浴びている。本稿では,これら自然を対象とした心理学研究を概観し,この領域における現在の課題や今後の方向性について述べた。