社会科研究
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子どもの社会参加を促進している学校カリキュラムとは何か ―ICCS 調査を応用した中学生への質問紙調査から―
小栗 優貴堀井 順平
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2021 年 95 巻 p. 49-60

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抄録

 本研究は,これまで社会科教育研究において提案されてきた社会参加を促すカリキュラムについて,子どもへの有効性の観点から検討したものである。検討をするにあたってはまず,ICCS(世界的な市民性・市民性教育の調査)の調査枠組みを応用し,中学3年生1,495名に対して,達成されたカリキュラム(社会参加)に影響を与えている実施されたカリキュラムをみとる質問紙調査を行った。調査後は因子分析を行い,その後パス解析を行った。その結果「学校内での学び合い」因子と「学校運営・問題の学習」因子は,参加経験・市民的効力感・参加意欲などに正の影響を与える一方で,「社会問題の学習」因子は,市民的効力感のみに正の影響を与えることが明らかとなった。ここから,以下の点を論じた。

 1つ目,調査結果から言えることとして,従来,論じられていた社会参加学習の諸条件である社会問題や学校外との関わりは授業構成として必ずしも必要ではないこと。むしろ社会参加を促進させるには,学校問題を取り扱ったり,学校内で学習を進めたりする方が子どもにとって有効であること。

 2つ目,考察から言えることとして,従来「社会科でこそ」何をするべきかという問いと連動させながら社会参加学習の研究を進めてきたが,「社会科でも他教科でも」という議論の方が子どもにとって有効であること。

 本研究は, 社会参加を促す効果的なカリキュラムを提案したことに加えて,社会科教育の議論の枠組みの限界性を指摘し,新たな研究の問いの立て方を方法論とセットで提唱したところに意義がある。

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© 2021 全国社会科教育学会
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