研究の目的は次の2つである。1つ目は,多様な進路を目指す高校生が在学しそれに対応するクラスを設けているX高等学校を事例に,学習文脈が高校生の歴史授業に対する意識に与える影響について調査・分析することである。2つ目は,歴史授業改善のための示唆を導出することである。
研究の結果,次のようなことが明らかとなった。「歴史を学ぶ目的」に関しては,生徒は学習文脈に関わらず「知識や教養」「歴史の教訓に学ぶ」「現在の理解」を重視していた。また,「歴史教師に求める授業」に関しては,生徒は学習文脈に関わらず教科書に基づいた学習を重視していた。その一方で,「歴史教師に求める授業」に関しては,大学受験や就職試験の対策を求めるなど学習文脈による違いも確認することができた。さらに,生徒が重視する「歴史を学ぶ目的」と「歴史教師に求める授業」が一致している場合は学習内容に対して興味が高い傾向を示すが,一致していない場合は学習内容に対して興味が低い傾向を示すことが明らかとなった。
研究の結論として,生徒が重視する「歴史を学ぶ目的」に応える授業を「歴史教師に求める授業」を意識しつつ実践することが生徒の興味を高めることにつながると主張した。加えて,これまで開発されてきた歴史授業モデルを参考に,いかなる歴史授業がどの学習文脈の生徒の必要に応えることができるのかについて提示した。