林業経済研究
Online ISSN : 2424-2454
Print ISSN : 0285-1598
東京都御蔵島村におけるツゲ材生産の変遷と現在
部分林制度を中心として
田中 亘
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キーワード: 御蔵島, ツゲ, 部分林, 村有林
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2018 年 64 巻 3 号 p. 16-25

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抄録

本研究はツゲの高級材の産地として知られる御蔵島のツゲ材生産に関して,部分林を中心にその変遷と生産実態を明らかにした。現時点で主な生産地となっている黒崎髙尾地区のツゲの部分林は村有林内で昭和初期に設定された。村はツゲを造林および管理する島民個人と60年を期限として分収契約を結んだ。その後,部分林の一部は2度にわたって契約が延長された一方,多くは成林しなかったなどの理由で既に契約が終了している。現在の部分林契約者は30名程度だが,生産者は約10名でほぼ固定的である。生産者のほとんどは冬期間の村による丸太の買い取り時期に合わせて伐採し,村に販売している。ただし,生産意欲の高い生産者においてはツゲ林保有者からの委託で伐採したり,独自にツゲ材の需要者へ販売したりする例も見られる。ツゲ部分林は資源造成に関して一定の役割を果たしたといえる。しかし一方,島民の財産形成という観点では,経済状況の変化によって限定的な役割にとどまったと考えられる。

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© 2018 林業経済学会
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