日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: D14
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T8 森林土壌におけるガスの動態
森林流域におけるメタンフラックスの時空間分布
*伊藤 雅之大手 信人勝山 正則川崎 雅俊
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抄録
メタン(CH4)はCO2に次ぐ主要な温室効果ガスであり,一般に不飽和条件下の好気的土壌においては酸化され,浸水した飽和土壌においては還元的条件下で放出されると考えられている.森林土壌はその大部分が不飽和条件下の土壌で構成されるためメタンの吸収源であると考えられることが多いが,森林流域内部に存在することの多い湿地においてはメタンの放出がなされている可能性がある.本研究では,森林流域の各部位におけるメタンフラックスの時間的・空間的な変動を把握する目的で,クローズドチャンバー法による地表面メタンフラックスの測定とフラックスに影響を及ぼすと考えられる環境条件の調査をおこなった.その結果,地下水位や土壌水分の変化により場の酸化還元状態が変化し,各部位の土壌におけるメタン吸収・生成を制御していることが明らかになった.ヒノキ林において,土壌水分の低い地点は年間を通じてメタン吸収が観測され,土壌水分の高い湿地近傍の地点では,夏期にメタンの放出が見られた.湿地においてはほぼ年間を通じてメタンの放出が見られ,夏期に放出量が増大したが,夏期の地下水位の低下により放出が制限されることが示された.また,地温の上昇はメタン生成を増加させ時間的変動の要因となったが,吸収にはあまり影響を及ぼさなかった.流域全体としてのメタンフラックスを推定したところ,森林流域は高温期には湿地からのメタン放出が卓越するために,メタンのソースとして機能していることが明らかとなった.このことから,従来のように森林流域をメタンのシンクとしてのみ考えると,その吸収量が過大評価される可能性と,ライパリアンゾーンにおける放出量の推定を行う必要性が示された.
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© 2004 日本林学会
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