2018 年 13 巻 3 号 p. 205-221
砂の液状化挙動と損失エネルギーの関係を調べるために,中空ねじりせん断試験機を用いた正弦波と不規則波による一連の応力制御非排水繰返し載荷試験を行った。正弦波試験では,同じ相対密度・細粒分含有率の砂については,水圧上昇率・両振幅せん断ひずみが応力振幅や繰返し数によらず損失エネルギーによりほぼ一意的に決定できること,ひずみ~損失エネルギー関係は勾配の異なる3区間に分けられること,損失エネルギーを有効拘束応力で無次元化する実験的根拠があることが示された。不規則波試験でも変動幅は大きいものの,振幅・ゼロクロス回数や波形にあまりよらないほぼ一意的な損失エネルギー~水圧上昇率・両振幅せん断ひずみ関係が得られた。ただしあるひずみ振幅に達する損失エネルギーはひずみが大きくなるほど変動幅が拡大し,またゼロクロス回数の多い波ほど小さくなる傾向が表れる。不規則波形では各サイクルの中立軸の変動や波形不規則性の僅かな違いが液状化時の低拘束圧下でのひずみに大きな違いをもたらすためである。しかし工学的には,精緻な解析により評価精度を上げるより,損失エネルギーのような指標による変動幅を考慮したひずみ評価を目指す方が合理的であると思われる。