鉄道構造物で使用されるラーメン高架橋は,一般に桁式高架橋に比べて線路直角方向の水平剛性が低いことから,地震時には,ラーメン高架橋と桁式高架橋の境界での不同変位が大きくなり,列車走行安全性が問題となる場合がある。これに対し,斜杭基礎を鉄道構造物へ適用することで構造物の水平剛性が向上し,地震時の列車走行安全性を高められることが期待できるが,施工環境などの制約から近年の鉄道構造物では斜杭基礎の適用が行われていないこともあり,地震時の水平抵抗特性など未解明な点が多い。そこで,静的および動的の非線形解析と模型実験に基づき,斜杭基礎の水平抵抗特性を明らかにするとともに,鉄道構造物への適用性について検討した。本論文では,比較的小さな傾斜角度の斜杭基礎を対象に検討を行い,5度程度の小さな傾斜角度でも,鉄道構造物の地震時水平変位量を小さく抑えられることや,等価固有周期を短くできることを確認した。また,列車の走行安全性が構造物諸元の決定要因となるような場合に斜杭基礎を適用することで,耐震性のみならず経済性も向上することを確認した。