日本森林学会誌
Online ISSN : 1882-398X
Print ISSN : 1349-8509
ISSN-L : 1349-8509
論文
樹種選択性,選好性樹木の分布および土地利用頻度からみた大台ヶ原におけるニホンジカによる樹木剥皮の発生
釜田 淳志安藤 正規柴田 叡弌
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 90 巻 3 号 p. 174-181

詳細
抄録
高密度に生息するニホンジカによる樹木剥皮が森林衰退の大きな原因となっている大台ヶ原において,植生の異なる東大台地域と西大台地域における剥皮害の地域的分布の違いおよびその要因を明らかにすることを目的とし,樹木剥皮の程度,ニホンジカによる樹種選択性,シカの選好性が認められた樹木の分布状況およびニホンジカの土地利用頻度に関する調査を行った。その結果,針葉樹ではウラジロモミ,トウヒ,ヒノキ,広葉樹ではヒメシャラ,リョウブ,コバノトネリコがニホンジカによって選択的に剥皮を受けていることが明らかになった。この6種をニホンジカによる選好性樹木と定義し,東大台と西大台間で選好性樹木における剥皮強度を比較した。その結果,西大台よりも東大台で,樹木剥皮が激しいことが明らかになった。また,東西でニホンジカの樹種選択性およびニホンジカの選好性樹木であるウラジロモミ,ヒノキおよびリョウブの分布状況はほぼ同一であった。一方,ニホンジカの生息密度を反映する土地利用頻度は西大台よりも東大台で有意に高かった。以上のことから,ニホンジカの土地利用頻度が高いため,東大台で剥皮害が激しいと考えられた。またその背景には,ニホンジカが主要な餌としているミヤコザサの存在が関係していることが示唆された。
著者関連情報
© 2008 一般社団法人 日本森林学会
前の記事 次の記事
feedback
Top