抄録
患者は初診来院時65歳の女性で,これまで歯科医院とはほぼ無縁な人生を歩んできた.無症状で経過した広汎型重度慢性歯周炎が引き金となり根面う蝕が発症した.初めて疼痛を感じ,当院を受診し,結果としてそのことが歯周病を治療することに繋がった.自分が歯周病に罹患しているという現実と向き合っていくなかで,行動変容がなされ,現在サポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)継続4年が経過している.ただ現状もプラークコントロールのアップダウンが激しく,それには患者の生活背景も影響していると考えられる.新たな根面う蝕発症のリスクを抱えながら,SPTのたびに口腔内環境維持の難しさを痛感させられている症例を報告する.