抄録
〔目的と方法〕授業における生徒の学習経験を明らかにするために、授業前後の質問紙調査などによる量的研究がある。だが、この方法では授業を通じて何をどう学んだのかは間接的にしか明らかにできない。学習経験をより直接的に把握するためには、授業での生徒の発話やジャーナル(生徒の記述)を対象とした質的研究法が有効である。そこで本研究は、「家族」に関する学習における生徒のジャーナルに着目し、その授業での生徒の学習経験の一端を質的方法の基礎であるカテゴリー化の作業結果に基づいて解明する。分析対象は、高校1年の「家族と法律」の授業実践—「夫婦別姓」をテーマとしたロールプレイ·ディベート学習における生徒のジャーナルである。
〔結果〕夫婦別姓の賛否を問われた際の理由付けをカテゴリー化した結果、そこには「『家』制度の残滓、結婚改姓の矛盾·不合理、男女不平等、性別役割分業」といった、教科書やメディアの言説に支配的なカテゴリーは少なく、むしろ「子ども·夫婦·家族との関わりや結婚に対する考え」への言及が多いことがわかった。またジャーナル執筆の際の生徒の書き方には(1)自分の問題として語る、(2)社会の一般的な問題として語る、(3)自分の問題として、かつ社会の一般的な問題として語る、という3タイプに分かれること、及びタイプにより登場するカテゴリーに偏りがあることも分かった。