抄録
【目的】子ども達の「いのち」の捉え方が憂慮される現在、日本における「いのち教育」の必要性が指摘されつつある。しかし、我が国においても半世紀前までは自然発生的な「いのち教育」が行なわれており、その一つとして家庭や地域における死に関わる慣習行事·儀礼が挙げられる。本研究では、死に関わる慣習行事·儀礼に対する子ども達の生活と意識の実態に関するアンケート調査を行ない、現在の子どもたちへの「いのち教育」に取り組む手立てを検討した。
【方法】自記式アンケート調査を行なった。期間は2001年1月から3月。調査対象者は小学校5年生から高等学校2年生までの児童·生徒1183名。有効回答率は99.7%であった。
【結果】悲嘆を伴う死別経験があると回答した子どもは60.4%であった。死に関わる慣習行事·儀礼の知識·参加度合及び家庭内の宗教的な場所の設置率の回答は、小·中·高校と年齢に比例して上昇する傾向であった。また、女子の方が男子よりも悲嘆を伴う死別を有意に多く経験しており、死に関わる慣習行事·儀礼の知識の回答でも、女子の方が男子よりも知っているという結果であった。一方、拡大家族は、核家族よりも仏壇等の宗教的な場所の設置率が高く、さらに拡大家族の子ども及びその家族員は、核家族よりも有意に多く、仏様や神様へお供えをする習慣があるという結果が得られた。以上より、死や悲嘆に対する年齢や男女による意識の差異への配慮や学校段階に応じた取り組み、拡大家族の長所の見直し等による「いのち教育」の取り組みが要望される。