日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第46回日本家庭科教育学会大会
セッションID: 23
会議情報

第46回大会口頭発表
英国PSHE(Personal, Social and Health Education)にみる差異と共生に関する学習
ケンブリッジ州初等学校のカリキュラムからの考察
*堀内 かおる
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
<目的>1996年以降の英国(イングランド)の教育改革の流れの中で、クローズアップされた総合的な学習領域の一つが、PSHE(Personal, Social and  Health  Education)である。国家がこの領域に関する学習指導のあり方について積極的に取り組むようになったのは、ナショナル・カリキュラムの中に「非法制化」された領域として明記された1999年前後のことである。 PSHEには広範な内容が含まれており、ジェンダーや人種・民族などをはじめとする個々の子どもの差異と共通性に着目し、人間理解と他者尊重・自己肯定感を育む教育が取り上げられている。そこで本研究では、PSHEが英国で注目されるようになった背景、及びPSHEのカリキュラムと指導・評価方法の分析を行い、日本の家庭科教育において差異と共生に関する学習を取り上げる可能性を検討する。
<方法>1996年教育法改正以降に出されたPSHE関連の以下の文献を中心に、PSHEにおける差異と共生に関する学習の位置づけを明らかにする。その上で、英国の教育をめぐる社会の動向を視野に入ながら、日本の家庭科への示唆という観点から考察を行う。*Jane Jenks & Sue Plant ( 1998 ) PASSPORT: framework for Personal and Social Education, Calouste Gulbenkian Foundation*DfEE ( 1999 ) Preparing Young People for Adult Life, DfEE *Cambridgeshire County Council ( 1999 ) The Cambridgeshire Scheme of Work for  PSHE: Key Stage 1&2, Cambridgeshire County Council 
〈結果及び考察〉1996年教育法のSection351において、学校には「a.学校や社会の中で、子どもたちの精神的、道徳的、文化的、心理的、身体的な発達を推進すること」、「b.子どもたちが大人になったときの生活上の機会や責任、経験にむけた準備をすること」の2つの観点に基づくバランスのとれた広範にわたるカリキュラムを提供する必要があると明記されている。 Calouste Gulbenkian財団は、教育雇用省(DfEE)の支援を得て、1997年末にPASSPORT プロジェクトを委任された。1998年8月に刊行された同プロジェクトの報告書(PASSPORT: framework for Personal and Social Education)では、大人になったときの生活の成功と充実のためには、個人的・社会的スキルの発達がきわめて重要であるとし、学校におけるPSE(Personal,Social Education:PSHEの前身)の指導計画が明示された。ここで差異と共生に着目した内容は、Key Stage l~4のすべての段階に含まれ、自分自身と身近な他者に関する事柄から社会的な問題まで、継続的に学べるように組み立てられている。1998年5月には、当時の学校基準局の国務大臣であるEste11e Morrisと厚生大臣であるTessa Jowellによって、学校におけるPSHEに関する国家諮問委員会(National Advisory Group on PSHE in Schools)が組織された。この委員会は、PSHEの目的と学習目標についての指導助言、用語の定義を行うとともに、PSHEに関する国家の枠組みを策定し、他のカリキュラム領域との関連について検討する役割を担っていた。同委員会によって1999年5月に公表された答申(National Advisory Group on PSHE in Schools)によると、子どもたちが自分自身について知り、肯定的な自尊感情と自己信頼を獲得する学習を推進する必要があると指摘されている。PSHEは、このような子どもたちの人格的・社会的な発達に寄与するための教育として導入され、学校教育の中心に位置すると考えられていた。 ケンブリッジ州の初等学校でのPSHE指導計画(The Cambridgeshire Scheme of Work for PSHE: Key Stage 1&2)を具体例として分析した結果、2・4・6学年におかれている単元である「感情と人間関係」の中に、「共通性と差異」という小単元がおかれ、ジェンダーや文化的背景等に基づく差異に目を向ける学習が位置づけられており、学習活動と指導方法、評価の観点等の例が示されている。
著者関連情報
© 2003 日本家庭科教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top