抄録
研究目的 デユーイの行った研究の教育史的意義は、アメリカはもちろん日本でも広く認められているが、デユーイ実験学校の実践については十分な検討はなされていない。小柳(1998)は「歴史的評価の高さとはうらはらに、シカゴ大学実験学校が実際にどのような学校であったのか、その実態については意外に多くのことが知られていない」と指摘しており、最近になって、若干の研究者によって実践の詳しい分析が行われ始めている。 デユーイ(1895)は、「始まりは社会の基礎である一住宅(木工)、織物(縫い物)、食物(料理)に関係する子どもたちの活動を作る。これらの、直接的な表現の形態は直ちに、話し方、書き方、読み方、描画、鋳造、模型、製作のような社会的なコミュニケーションの要因をより顕著に表す派生的表現の形態を要求する」と述べ、こんにちの「家庭科」で取り上げられている学習課題を重要視している。 そこで、本報告では、デユーイ実験学校における「食」実践を取り上げ、デユーイが「食」実践において何をどのような形で子どもたちに伝えようとしていたのかを検討することを目的にする。
研究方法 デユーイの授業計画(1985)、デユーイ実験学校の実践(1898-1899)、デユーイによる実験学校の実践を「計画」-「授業実践」-「解釈」として区別し、一連の実践としてとらえる方法で検討を進めた。デューイの授業計画に取り上げられている4つの内容、「家事(House-keeping)」、「木工(Wood-Work)」、「食(Foods)」「衣(Clothing)」のうち、「食」に関する実践を取り上げた。検討に際しては、従来の諸研究のように文章の形で記録をたどる方法、表にする方法ではなく、全体の流れが見て取りやすい系統図を作成する方法を開発した。実践事例は、デューイ実験学校の学習指導要領が完成に近づいた1898-1899年のものを取り上げた。
結果 本研究では、系統図を用いてデユーイ実験学校で取り上げられた学習課題、学習活動を知識の活用の視点で捉えることを試みた。その結果、「食」の学習テーマが、いろいろな食物についての研究を通して知識を得、得た知識を活用して次の課題に取り組むことによって、「調理」のみにとどまらず、「歴史」「理科」「算数」「地理」などのさまざまな分野に広がり、学んだ知識が活用されていることを確認できた。同じ食物を何度も取り上げることによって知識の定着を図り、次第に複雑になっていくことから既知の知識の活用を学習し、新たな課題に取り組むことによって、その知識が深化していくように計画され、実践が行われた。 得た知識を使って新たな課題に取り組み、その知識を深化させ、適用範囲を拡大する。デューイ実験学校で行われた実践は、こんにちの「家庭科」実践に活かされ得る。家庭科教育で得た経験や知識を他教科や総合的な学習の時間に適用してみる。実際に使用して、具合が悪いところがあれば修正する。このような実践が可能であると考える。 教科についてデユーイ(1900)は「すべての教科は、一つの地球という側面から、および地上での同一の生活のさまざまな側面から生じるものであるp.152)」と述べている。教科の出発点は、生活であり、生活の視点で捉えることによって、細分化された知識を統一性を持ったものとして捉えることが可能になる。子どもの生活世界全体という視点から家庭科、各教科の関連性を捉えなおし、学習を展開することが必要である。