抄録
【目的】高等学校家庭科は1989年改訂の学習指導要領で男女必修が実現し、現行指導要領でも「男女共同参画社会の推進」が明記され、すでに男女平等教育は達成されたという見方もある。しかし、実際の学校生活の中ではまだ性にしばられた言動がみられる。本研究では、事前調査としてジェンダー学習前後の小・中・高校生の意識変化を調査した。その結果から、最も変化がみられなかった高校生を対象に複数回のジェンダー学習を行い、事前調査で1回のジェンダー学習を実施した高校生の結果とを比較し、複数回の授業効果を明らかにすることを目的とした。
【方法】1.対象;事前調査のA高校生33名(男子16名、女子17名)発表者が勤務していたB高校生8名(男子5名、女子3名)。2.調査時期;ジェンダー学習はA高校では2001年11月、B高校では2002年7月に行い、意識調査は学習の直前と学習1詞繧sった。3.調査項目;A高校生は(財)東京女性財団作成のジェンダー・チェックをもとに作成した20項目の意識調査と学習後の感想文を分析した。B高校生はA高校生と同じ意識調査と、学習中に生徒が記入した学習プリントと学習後のインタビューを分析した。4.ジェンダー学習の内容;結婚などの学習を通してジェンダーに気づかせることを目的とした。
【結果および考察】1.ジェンダーへの気づき;授業を1回実施したA高校では、「気づき」があった生徒は17人(52.7%)、「気づき」がみられなかった生徒は13人(39.3%)、「その他」(不明)3人(9%)だった。また、「気づき」のあった生徒はフリー化した割合が高い(58.8%)が、「気づき」がみられなかった生徒はバイアス化した割合が高く(69.2%)なった。一方、B高校では、「気づき」があった生徒は6人(75%)、「気づき」がみられなかった生徒は1人(12.5%)、「その他」(不明)1人(12.5%)だった。B高校でもA高校と同様となったことから、「ジェンダーに気づく」ことはジェンダー観がフリーになることに関連することが示唆された。2.複数回のジェンダー学習と1回のジェンダー学習との比較;学習中や学習後の手応えからジェンダーに気づくためにはいくつかのステップ、つまり「知識の獲得」「気づきの有無」「意識の変化」「行動への意欲」であり、それらを経て「ジェンダー観」が形成されると考えた。また、「気づき」は「自分」の生活への振り返りが見られる気づきと「一般」的な事象に対する気づきの2つに分類した。その仮説に基づいて2つの高校生が記述した感想文等を分類した。A高校では、授業後に「知識の獲得」が観察されたのは33人中22人であった。「気づき」が観察された生徒は17人で、そのすべてが「一般的」事象に気づいていたが、「自分」の生活を振り返る「気づき」があったのは3人であった。また、「意識の変化」が観察されたのは8人で、全員に「気づき」が観察された。しかし、「行動への意欲」は1人しか確認できなかった。これより、1回の学習ではジェンダー観をフリーにすることは難しいことが伺えた。一方、B高校では授業後に「知識の獲得」が見られた者は6人で、全員に「一般的」な事象への「気づき」があり、このうち3人は「自分」の生活を振り返る「気づき」が観察された。「意識の変化」がみられた2人は、この「自分」への気づきが観察された生徒であった。しかし「行動への意欲」についての記述は見られなかった。ジェンダーチェックからジェンダー観がフリー方向に動いた者は3人、変わらなかった者は1人、バイアス方向に動いた者は4人であったが、いずれの変化も小さくジェンダー観の変化を判断するのは難しかった。そこで、B高校生一人一人にインタビューを行い意識の変化を詳細に分析した。その結果、<意識の変化>や<行動への意欲>を詳細に把握することができ、7人(87.5%)の生徒がフリー化したことがわかった。これより、ジェンダーに気づくためには複数回の授業実施が効果的であることがわかった。