抄録
目 的
平成20年に改訂された、小・中学校家庭科学習指導要領では、A家族・家庭、B食生活、C衣生活・住生活、D消費生活と環境の4つとなり、衣生活と住生活の内容が1つにまとめられた。
学習内容は、これら4つの内容について、「相互に有機的な関連を図り、総合的に展開されるよう適切な題材を設定して計画を作成すること」と示されている。
一方、昨今家庭や地域社会においては、さまざまな生活の変容が見られるようになった。そのような社会に生きる子供たちの生活実態をふまえ、題材を設定する必要もある。そこで本研究においては、生活の器でもある「住まい」に焦点を当て、小、中、高等学校の家庭科学習における家族・家庭、食生活、衣生活、住生活各分野の相互の関係性を深め、有機的な関連性を理解しやすくするための学習内容を検討することにした。
方 法
日本家庭科教育学会近畿地区有志12人により、2008年12月に「住生活研究会」を立ち上げた。小・中・高・大学の教員が一同に集まり、以下の手順で研究を進めた。
まず、今までの家庭科教育における「住居領域」学習の在り方と、新学習指導要領における「住居」の扱いについて検討した。その中で、衣生活や住生活は、それぞれ独自の領域としての取り上げ方もあるが、住まいの中で衣生活―洗濯、収納、管理などの―合理化を図るといった課題を結合した学習も可能なことが提案された。このような視点を他の分野にまで広げて考察してみると、住まいを基本舞台として、さまざまな家庭生活を有機的・総合的に捉えることも可能ではないかとの構想が浮かび上がった。
そこで小・中・高等学校のこれまでの住居学習に関連する各分野の授業実践を持ち寄り、新たな住居学習の基本構想モデルと小・中・高等学校別に学習内容を整理したマトリックス表を作成した。
結 果
基本構想モデルは、住まいを基本舞台として家庭生活全般を考えたものである。個々の住まいを含みつつ、より広い空間が地域である。それは、基本舞台を取り巻いているとも言える。それらの軸は人であり「家族・家庭・ご近所」が中核となっている。
「家庭生活」の中で営まれている行為に着目すると、「食べる」「着る・装う」「育つ・育てる・支える」に加えて「くつろぐ・楽しむ」などがあり、それらの行為は単独のものではなく、複雑に絡み合い生活が成り立っている。この「生活」は安全かつ、最低でも健康で文化的でなければならない。さらに「生活」では、能率と快適性も必要である。
そして、人々の生活の営みの中から、さまざまな文化を生み出し、それらを伝承し、「家庭」や「地域」の中で大切にされてこそ、持続可能な社会が形成されると言える。
「食べる」「着る・装う」「育つ・育てる・支える」「くつろぐ・楽しむ」の「家庭生活」が、住まいや地域の舞台とどのようにつながり、どう展開しているのかを理解することが、家庭生活を総合的に捉えるひとつの方法ではないだろうかと考え、住まいを基本舞台として捉え直し、生活の総合的把握が進むような、子供たちに備わっている力を伸ばし、バランスの取れた発達・成長といった点に配慮し、基本構想モデルを具体化したマトリックス表を作成し「住まい学習」の充実を図った。
2010年1月に高等学校の学習指導要領解説が公示された。今回の改訂では、消費者教育や環境教育が重視され、家族や生活の営みを人の一生とのかかわりの中で総合的にとらえ、生活を主体的に営む能力と実践的な態度を育て、男女が協力して家庭や地域の生活を創造する能力を育てることなどが目指されている。ウ.住居と住環境では、「住居と地域社会とのかかわりなどに必要な基礎的基本的な知識と技術を習得させ、安全で環境に配慮した住生活を営むことができるようにする」と明示された。今回作成したマトリックス表にも反映させている。
( 研究助言協力者 西村一朗 奈良女子大学名誉教授)