日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第55回大会・2012例会
セッションID: A4-4
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第55回大会:口頭発表
高等学校家庭科の位置づけの再検討
大学入試センター試験問題とのかかわりから
*大原 弘子赤塚 朋子
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抄録
<目的>

進学校と言われる高等学校の場合は特に顕著な「受験教科でない」家庭科の時間の位置づけは問題である。いわゆる主要5教科以外と位置付けられ、時間数が確保されることも危うく、家庭基礎2単位の履修が多くなっている。しかし、本当に、家庭科という教科は「受験に関係ない」のであろうか。「受験に関係ある教科」としたいわけではないが、なぜ高等学校の教育課程において、家庭科が蔑ろにされるのだろうか。こうした疑問から、本研究では、大学入試センター試験問題と家庭科のかかわりを探ることで、家庭科という教科の高等学校での位置づけを再検討し、提案することを目的とした。

 <方法>

2012年1月14、15日に実施された大学入試センター試験問題のうち、国語、地理歴史、公民、数学、理科、外国語の各教科のうち、1000人以上の受験者があった24科目の問題を対象とし、高等学校家庭科教科書との関係に注目して、キーワード検索を行い、分析検討した。

教科書は、栃木県の履修率が65.9%(「高等学校家庭科の履修単位数をめぐる現状と課題」日本家庭科教育学会誌 第54巻第3号)を占める「家庭基礎」を用い、教科書出版社の教育図書、大修館、実教出版、開隆堂、東京書籍、第一学習社の各社1冊ずつの計6冊を対象とした。

 <結果>

「大学入試センター試験は、大学(短期大学を含む。以下同じ。)に入学を志願する者の高等学校段階における基礎的な学習の達成の程度を判定することを主たる目的とするもの」であり、「大学教育を受けるにふさわしい能力・適性等を多面的に判定することに資するために実施するもの」(大学入試センターホームページ、センター試験の概要より)である。つまり、センター試験問題は、高等学校段階における基礎学力をはかる手段と言える。

今年のセンター試験参加大学数は835大学で、内訳は、国立大82、公立大79、私立大513、公立短大16、私立短大145であった。受験生は、526,311人、現役志願率は41.5%となっている(2012年度大学入試センター試験実施結果の概要)。

実際に、センター試験問題と家庭科教科書を照らし合わせてみたところ、家庭科の学びが、24科目のうち12科目と関係があり、センター試験問題を解く際には、かなりの頻度で思考の助けになっていることが明らかとなった。 たとえば、防虫剤の昇華、漂白剤の酸化・還元、石鹸水の乳化・分散作用を理解していれば解ける化学1の問題や、食品ロス、フェアトレード、トレーサビリティ、食糧自給率の理解で解ける現代社会の問題があった。

試験問題に関係するキーワードを、教科書の該当ページに領域別に色分けした付箋で貼っていく作業を行った。各社の教科書の編集方針によって、その違いはあるものの、概ねどの教科書にも領域別に色分けした付箋が貼られた。また、それらの教科書を見た教員、ならびに生徒の反響は大きかった。教員にも生徒にも、そして家庭科以外の教員にも、関係が深いことを知ってもらうことで、家庭科に対する印象がかわることを示唆している。

高等学校家庭科の現状は、「家庭基礎」2単位履修を選択する傾向も否めず、高等学校の1学年のみの時間数という厳しさもみられる。教員配置も各学校に1名のところが多く、「受験に関係ない」教科という意識が大多数の学校では、家庭科の学びの意識そのものが停滞する雰囲気が学校全体を覆っているといわざるをえない。しかし、本研究の結果をふまえ、家庭科の学びが、高等学校の基礎学力の総体というシチズンシップ教育と関連が深く、「受験に役立つ内容」もあり、「将来の多様な選択肢を提示し、その土台をつくり、踏み出す1歩を支える教科」という位置づけを提案したい。
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© 2012 日本家庭科教育学会
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