抄録
<B>研究の背景と目的<B/><BR>持続可能な未来にむけて教育の在り方を変えていこうとするESDの推進がグローバルレベルで行われている。「国連ESDの10年(2005年から2014年)」の中核目標には、「教育と訓練の質を高める」が挙げられ、日本においては、ESDをリードし指導できる教員を養成することが課題となっている。<BR>報告者らはこれまで、包括的な視点で持続可能な社会の実現を目指す学習開発、授業実践、カリキュラム開発を行い、家庭科教育におけるESD研究へと発展させてきた(「家庭科における食生活と世界のつながりを考える授業実践」千葉大学教育学部紀要58,2010:「格差社会に生きる若者の自立支援」生活経営学部会報告要旨集,2010:「住まいの学習における「空間の生命化」日本家政学会誌62号9,2011)。これらの継続的研究においてESDの学習指導の内容、重視する能力や態度、指導法が多様であることによるESD実践と指導の課題が考察された。さらに、報告者らは、この課題に対し、PIP(Projection Images by Photography)の手法を用いて、試行的にESDモデルの開発を行い、PIPがESDに関連する子どもの生活環境や生活文脈を把握する有効なツールであることを実証している(「家庭科の視点を中軸に据えたESDモデルの開発」日本家庭科教育学会要旨,2011)。<BR>教員養成を担う日本の高等教育機関において、ESD実践の効果的な教育プログラムは極めて少ない。この課題を踏まえ、本研究は、家庭科におけるESD実践の指導者の育成やESD指導の専門性の向上を目指すプログラム開発とその教育的効果を実践的かつ実証的に検証することを目的とする。<BR><B>方法<B/><BR>報告者らが家庭科の専門性を学ぶ教員養成大学の学生を対象として試行的に開発した「PIPメソッドプログラム」(「Effectiveness of PIP-Model for improving pre-service teachers’ teaching skills in the practices of ESD」5th International Consumer Science Research Congress,2011)を家庭科教育関連の授業において実施し、このプログラムの教育的効果を1.ESD学習指導案改善のためのチェックリストを用いた指導案改善前・改善後の検証2.学習評価(自己・他者)の検証3.「PIPメソッドプログラム」終了後に行う学生からのフィードバックの検証の3つの方法で行った。<BR><B>結果<B/><BR>数量分析から、対象者は、チェックリストの項目の中で、「自分で感じ、考える力」や「関わる人が互いに学びあえる」、「身近な普段使っているものから考える」などの項目をESD指導において最も重要な項目と捉えていた。一方で、「自然そのものを大切にする方法を考える」ことや「自ら実践する力」などの項目は、指導案作成において考えにくく、取り入れにくい項目であることが明らかとなった。また、チェックリストの項目は、最初の学習指導案よりも改善後の学習指導案で増加しており、ESD指導に重要だと考える項目の広がりが見られ、ESD指導の観点の深まりが示唆された。学習評価の検証からは、学生は、学習指導案の達成項目を認識することができ、また自分の学習指導案を客観的に見ることができたことが明らかとなった。「PIPメソッドプログラム」終了後に実施した学生のフィードバックからは、学生は、子どもたちの発想力、自分とは異なるESDに対する視点、発達段階の差などを理解しており、このプログラムの効果を検証することができた。