日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第56回大会・2013例会
セッションID: B4-2
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56回大会:口頭発表
生徒の思考を深める授業構造と授業方略
問題解決のプロセスを重視した授業事例をもとに
*荒井 紀子吉田 奈保美大嶋 佳子塚倉 知美
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抄録
【目的】  私たちの生活を取り巻く問題は複雑性を増し、何が問題かを見つけることさえ困難な状況が生じている。そのようななか、学校教育において問題を発見し見極める力や、現状を把握し解決策を探究する力を培うことは重要である。家庭科は本来、学習を通して子どもの思考力や問題解決力を育むことが教科概念の中核に位置づいている。新学習指導要領においても、思考力、表現力の育成や問題解決的な学習の一層の充実が求められている。しかし、子どもの思考を育む授業の構造や授業方略についての検討や研究はまだ十分とは言いがたい。本研究は、高等学校住領域での問題解決型授業を開発・提示するとともに、授業の実践結果をもとに、生徒の思考を深めるための授業の構造や、授業方略について検討・分析することを目的とする。
【方法】
1.高校「家庭総合」住生活領域において問題解決型授業を開発し、福井県立高校(職業系)1年生を対象に授業を実施した。授業の開発・実践は教師と研究者が協働で進めるアクションリサーチ方式を採用し、毎時間、複数参加者による授業観察を行った。
2.授業題材は「住まいと暮らし―15年後に住みたい家を考える」、授業構成(全14時間)は、米国の実践理論プロセス(Laster,2008)をもとに問題解決のプロセスを重視した以下の7次構成とした―1次「世界の家と暮らし」、2次「中古住宅の批判的検討」、3次~5次「15年後の家の設計」(コンセプトの設定・ゾーニング・設計)、6次「設計案の発表」、7次「共生の視点からの振り返り」。さらに、授業後、改めて自分の設計コンセプトと設計案を省察するために論述型テストを実施した。授業後のアンケート、ワークシートと設計集、テストの記述、ビデオや参与記録をもとに、生徒の思考の深まりと本実践の効果について量的、質的両面から分析する。
【結果および考察】
1.学習の授業構造と思考の深まりについて
 7つの学習項目に対する生徒の「関心」「有用感」「思考の深まり」を加点方式で合計した。いずれにおいても問題解決プロセスの3次「住宅のコンセプトの決定」(問題の特定)から4次「ゾーニング」(解決方法の選択肢の提案)へと関心・思考が高まり、5次「設計」(選択肢の検討・決定)でピークを迎える共通の型が確認され、本授業が生徒の思考の深まりを促す構造であることが示唆された。
2. 生徒の思考のつながり・深まりを促す授業方略について
  授業の取り組みと結果に特徴のある生徒を中心に各学習段階の記述内容、設計内容を分析し思考のつながりと深まりの程度を検討した結果、以下の点が明らかになった。1)学習の前後のつながりを認識している生徒は思考が深まる傾向がみられた。2)問題解決プロセスの3次「問題の特定」の意識化の有無がその後の思考の深まりに関係していた。3)ワークシートの記述量と思考の深まりは必ずしも一致せず、背景、理由等の観点の有無と思考の深まりの関連がみられた。このことから教師の授業方略として、各学習のつながりの意識化、問題解決プロセスにおける問題の特定場面での支援、背景や理由に関わる「問いかけ」の工夫―の重要性が示唆された。
3.思考の深まりと知識・スキル、学習の協働性との関係 
   授業終了後の記述を文意毎に一文と見なし、KJ法を用いて分析したところ、記述数の多い順に、a.学習の評価、b.個人の思考の深まり、c.知識・スキルの習得、d.他者との協働の手応え、の4点が抽出された。bとcには双方向の関係がみられ、それがaの授業評価へとつながっていた。同様な傾向をdとaにもみることができ、知識スキルの習得と学習の協働性が生徒の思考の深まりと関係していることが示唆された。
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© 2013 日本家庭科教育学会
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