抄録
【目 的】2009年の内閣府の調査で,大学生の外食利用頻度が高く,料理をする頻度は低くなっていることが報告されている。佐藤1)が,本学札幌校の学生を対象に行った調査でも,約8割の者が外食に抵抗感がなく,半数以上の者がほとんど料理をしていないことが明らかになり,内閣府の調査結果と同様の傾向を示した。一方,新宅ら2)は,大学生は料理に対する好感度や食意識が高いにも関わらず,家庭での調理経験が乏しい者が多く,料理に関する意識や知識に対して調理技術が伴っていない者が多いと述べている。料理技術を身につける場としては家庭があり,それ以外では小学校5年生から履修する「家庭科」の調理実習がある。そこで,本学札幌校の学生は,料理に関する技術や知識等をどこで身につけたのか,また自身の技術力をどのように評価しているか,さらに将来,教員を目指す学生は食に関する知識や技術はどこで身につけるべきと考えているのかを明らかにすることを目的とする。【方 法】1)調査対象:北海道教育大学札幌校学生及び同大学院院生 計124名(男性52名,女性72名) 2)調査時期:2012年11月~12月 3)調査方法:「属性」,「学生自身の食生活の実態」,「学生自身の家庭科に対する意識や技術の把握」に関する質問項目を作成し,質問紙法にて実施。 4)集計及び分析方法:「SPSS15.0J for Windows」の統計ソフトを用いて単純集計及びクロス集計を行い,x2検定を行った。【結 果】①調査対象者の約7割が,現在の自分の料理技術に満足しておらず,その中でも約6割は「今後,技術を身につける必要がある」と考えていた。技術を身につけたいと考えている者は,自宅生の方が自宅生以外よりも多い傾向がみられた。「今後,技術を身につける必要がある」と回答した者の理由をみると,「生活する上で毎日の食事を自分で作れるようになりたいから」が最も多かった。②「ごはんの炊き方」「みそ汁の作り方」「ゆで卵の作り方」「計量スプーンの使い方」に関する知識では,約5~7割の者が「小学校」で習得したと回答し,「栄養素とその働き」「6つの基礎食品群」「栄養所要量」の3項目については,約5~7割が「中学校」で習得したと回答していた。③「ごはんの炊き方」「味噌汁の作り方」「ゆで卵の作り方」に関する技術は,「家庭」で習得した者が最も多く,次いで「小学校」であったが,「計量スプーンの使い方」に関する技術は「小学校」が最も多く,次いで「家庭」であった。④「栄養素とその働き」「六つの基礎食品群」「基礎的な調理方法」「安全な食生活」「食事指導」に関する全5項目については,全体の8割以上が「小・中・高校を通して男女を問わずに教育すべき」「小・中学校で男女を問わず教育すべき」であると考えていることがわかった。特に,「小・中・高校を通して男女を問わずに教育すべき」と回答した者は,男性の方が女性よりも多い傾向にあった。ただ,「家庭教育に任せればよい」や「個人で勉強すればよい」と考えている者も合わせると約1割みられた。 しかし,この調査項目については,28年前に本学教員である中村ら3)が同様の調査を行っている。それと比較すると,全項目について「小・中・高校を通して男女を問わず教育すべき」と回答する者が,特に男性に増加しており,一方「女性のみ勉強すればよい」と回答する者は0人であった。⑤本調査対象者の8割は,「家庭科に対して,生活に直結する内容であるから,充実した指導が必要である」と考えている反面,「指導が難しい教科である」と考えている者が約1割みられた。1)佐藤英実,学士論文「北海道の郷土料理に対する意識と認知度について‐教員養成大学学生の場合‐」北海道教育大学札幌校,2012 2)新宅賀洋他,調理技術の習得度と食生活に対する意識との関連,甲子園短期大学紀要20号,2001 3)中村秀子他,教員養成大学学生の家庭科教育に対する意識調査-食生活領域を中心として,日本家庭科教育学会第31巻,3号,1987