抄録
目的 高等学校家庭科で実践可能な染色教材の開発を行っている。これまでに、媒染による色の変化が楽しめる玉ねぎ外皮染色を教材として提案し1)、さらに色のバリエーションを増やすため、混合媒染液についても検討を進めている2)。染色実習には調理室を活用することが望ましい。だがしかし、媒染剤に化学実験用試薬を使用するため、調理室での実習に際して、安全面や衛生面での不安が生じるという課題があった。また、媒染剤の濃度は高くはないが、環境負荷低減のためには、さらなる使用量の削減を検討しなければならない。
一方、媒染剤に用いてきた化学実験用試薬と、同一または類似の化学組成を持つものが、食品添加物として市販されている。食品添加物は食品衛生法によって定義されており、成分規格等を満たしたものである。食品添加物を媒染剤として使用することができれば、調理室での実習における上記の不安を低減できるのではないかと考えられる。
本研究では、食品添加物を用いた玉ねぎ外皮染色布の媒染が可能であるか、媒染剤使用量の低減も含めて検討を行った。
方法 布は、染色堅牢度試験用JIS L0803準拠の綿布を使用した。染色は、玉ねぎ外皮抽出液(100% o.w.f.、浴比1:50)に水で濡らした綿布を浸漬して加熱昇温し、沸騰後20分間行った。媒染は、軽くすすいだ染色布を室温の媒染液(6% o.w.f.、浴比1:50)に20分間浸漬して行い、媒染後、染色布をすすいで風乾したものを試料布とした。
媒染剤として、化学実験用試薬は、りん酸水素二カリウムと硫酸アンモニウム鉄(III)、硫酸カリウムアルミニウムを用いた。また食品添加物は、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸第一鉄七水和物、塩化カリウム、炭酸カリウムを用いた。試料布の測色には日本電色製スペクトロフォトメーターNF333を用い、表面反射率を測定し、CIE L*a*b*表色系による色変化を調べた。
結果 前報1)2)で使用した硫酸アンモニウム鉄(III)と、食品添加物の硫酸第一鉄七水和物の媒染効果を、試料布のa*b*値および目視により比較した。硫酸アンモニウム鉄(III)に比べて、硫酸第一鉄七水和物はb*値が高く、一方a*値はやや低くなった。目視でも色の違いが確認でき、硫酸第一鉄七水和物の方が緑味が強く、教材としては好ましいのではないかと考えられた。同様に、硫酸カリウムアルミニウムと、食品添加物の硫酸アルミニウムカリウムとを比較した。この2つは同一組成と考えられ、測色値もほぼ同じ結果となり、目視でも両者の色は同じであった。
また前報では、媒染剤にりん酸水素二カリウムも使用していた。今回、食品添加物に替えるに当たり環境負荷低減も観点に入れ、リンを含まない塩化カリウムまたは炭酸カリウムの使用を検討した。測色値および目視による比較では、塩化カリウムはりん酸水素二カリウムと差が無く、未媒染布に近かった。それに対して、炭酸カリウムはb*値が明らかに低く、a*値もやや高い結果となった。目視では他に比べて桃色に近く感じられ、色の変化の点ではりん酸水素二カリウムよりも教材として適していると考えられた。
以上の結果から玉ねぎ外皮染色布の媒染剤として、食品添加物の硫酸第一鉄七水和物、硫酸アルミニウムカリウム、炭酸カリウムの使用が可能であることが明らかとなった。そこでさらに、媒染剤濃度を6% o.w.fより下げて効果を検討した。硫酸第一鉄七水和物と硫酸アルミニウムカリウムは、20分の1でも大きな変化は見られなかった。一方、炭酸カリウムは10分の1でb*値が増加し、未媒染に近い色となった。
引用 (1)駒津順子、小松恵美子、森田みゆき、高等学校家庭科の染色教材開発-1単位時間で行う玉ねぎ外皮染色-、家政誌、2012、vol.63、no.3、p.133-141、(2) 小松恵美子、駒津順子、森田みゆき、日本家政学会第65回大会研究発表要旨集、印刷中(2013)