日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第56回大会・2013例会
セッションID: P25
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56回大会:ポスター発表
柔軟仕上げ剤に関する実験教材の開発とその有効性の検討
*中村  美奈子川邊 淳子
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抄録
【研究の背景および目的】衣生活管理において,仕上げ剤は,衣類を取り扱う際の使用感や着用時の快適性を向上させるために用いられる。中でも柔軟仕上げ剤は,近年様々な種類のものが販売されるようになり,高い芳香性をはじめとして,機能的かつ付加価値の影響でその使用も増大してきている。元々柔軟仕上げ剤は,衣類の滑りをよくすることで,柔らかい肌触り感を与えると同時に帯電防止効果を有するが,使用することで布地の吸水性が低下することもある。また,主成分は陽イオン界面活性剤であり抗菌効果を有するが,洗剤と違ってほとんど洗浄効果はない。最近では,吸水性能が改良されたものや濃縮型など,様々なタイプのものが発売されている。一方,高等学校家庭科衣生活管理分野においては,洗剤はもちろんのこと,仕上げ剤に関しては教科書でも取り上げられている。洗剤については,その働きについて科学的な理解を深めるように取り扱われている。しかし,仕上げ剤の一つとして,漂白剤と共に柔軟仕上げ剤は取り上げられているが,その働きについての理解のみにとどまっている傾向が強い。最近注目されている抗菌性や効果的な使用方法についてまでは,取り上げられていない。それゆえ,それらを十分に理解しない上で,日常生活で利用している傾向が強いと思われる。そこで本研究では,柔軟仕上げ剤に関する実験教材を開発するとともに,その有効性について検討することを目的とする。
【方法】H大学学生160名に対して,柔軟仕上げ剤の働き等に関するアンケート結果を,2009年2月実施した。さらに,柔軟仕上げ剤の働き・使用方法に対する認識を促すために,吸水性,帯電防止,抗菌性,洗浄作用の4つの働きについて,市販の柔軟仕上げ剤を用い,基礎実験を通して教材化を図った。その上で,2011年度オホーツク管内高等学校家庭科教育研究大会の実技研修として,高等学校家庭科教員に実験教材としての有効性と今後の課題について検討してもらった。
【結果および考察】大学生に対するアンケート調査結果から,柔軟仕上げ剤の働き・使用方法等については,「衣類を柔らかくする働きがある」は94.4%,「衣類の静電気を防止する働きがある」は67.7%,「汚れを落とす働きがある」は6.8%のものが該当すると回答していた。一方で,「衣類の吸水性が高まる」は50.9%,「細菌などをつきにくくする働きがある」は41.0%,「洗剤と一緒に使う方が効果的だ」は72.0%,「使用量が多い方が効果的だ」は14.9%が該当すると回答した。以上の結果から,柔軟仕上げ剤の一般的な働きについては概ね認識しているものの,教科書ではあまり取り扱われない働きや使用方法についての認識が低い傾向にあることが明らかとなった。また,基礎実験においては,吸水実験では,柔軟未処理布,1/2倍濃度,標準濃度,2倍濃度の順で,吸水性が低下する傾向が得られた。また,帯電防止実験では,未処理布と処理布の差が明瞭に現れたが,実験者の着用する衣服などから発生する静電気に影響を受けるので,季節や衣服の組み合わせを考えて実施することが必要であることも明らかとなった。抗菌実験では,処理布を用いた実験ではばらつきが見られ,原液を滴下する方法が有効であることが示唆された。さらに洗浄作用に関する実験では,柔軟仕上げ剤の洗浄作用は,水のみと変わらない汚れ落ちであり,目視でもはっきりその違いを確かめることができた。以上の結果から,市販の柔軟仕上げ剤を用いても,十分教材化が可能なことが分かった。高等学校家庭科教員には,4つの実験の教材としての有効性を5段階(1~5点)で判断してもらったが,得点平均は,吸水実験(4.8)>洗浄作用に関する実験(4.6)>抗菌実験=帯電防止実験(4.2)という結果となった。細菌培養器や静電気測定器などは,身近なもので代用することがさらに必要ではあるが,すべての実験において,短時間かつ目視で明確な結果が認識できることからも,教材としての有効性が示唆された。
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© 2013 日本家庭科教育学会
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