日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第56回大会・2013例会
セッションID: P34
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56回大会:ポスター発表
小学校学習指導要領家庭と幼稚園教育要領・保育所保育指針の比較
*古郡 曜子
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抄録
【目的】子どもを取り巻く環境は高度経済成長以降の核家族化、少子高齢化や情報化社会などの影響を受け、大きく変化している。家庭生活においても長時間労働や女性の社会進出により家事の外注化、食事の個食・孤食化が進み、家庭機能の低下、家庭教育力の低下へとつながる傾向にある。家庭生活は本来、地域の人々や環境にも支えられており、子どもの成長には地域の教育力が不可欠である。しかし現在は地域の人々や地域社会とのつながりが薄いことから、地域や環境とのつながりの大切さを実感できる機会も少なく意識することも難しい状況にある。小学校家庭科の主な目標は児童たちが主体的に生活をとらえ、生活を取り巻く環境とのつながりを理解し、日々の生活を工夫する意欲と実践的態度を身に付ことが目標である。個々の生活能力は幼児期から徐々に身につけるものである。そこで、幼児期に身につけるべき生活能力と小学生に求められる「生きる力」の関係性を幼稚園教育要領と保育所保育指針を家庭科的視点から探るものである。
【方法】小学校家庭科学習指導要領を幼稚園教育要領と保育所保育指針から比較した。さらに、各教育・保育の目的を明記した文献から幼児期と児童に求められている生活の自立を比較した。
 【結果】幼稚園教育要領では心情・意欲・態度の育成を「ねらい」とし、指導内容を5領域に分け、「健康」では「健康、安全な生活に必要な習慣や態度を身に付ける」「健康な生活のリズムを身に付ける」や「身の回りを清潔にし、衣服の着脱、食事、排泄などの生活に必要な活動を自分でする」と示されている。保育所保育指針では、「人との関わりの中で、人に対する愛情と信頼感、そして人権を大切にする心を育てるとともに、自主、自立及び協調の態度を養い、道徳性の芽生えを培うこと」がある。これらは小学校家庭科の学年目標である「衣食住や家族の生活などに関する実践的・体験的な活動を通して、自分の成長を自覚するとともに、家庭生活への関心を高め、その大切さに気付くようにする」「日常生活に必要な基礎的・基本的な知識及び技能を身に付け、身近な生活に活用できるようにする。」へとつながることが分かった。また、小学校家庭科の「自分と“家族など”とのかかわりを考えて実践する喜びを味わい、家庭生活をよりよくしようとする実践的な態度を育てる」という学年目標につながっている。ここでの“家族など”とあるのは、近隣の人々や周囲の環境を含めている。
【考察】幼稚園教育要領や保育所保育指針と小学校学習指導要領家庭科編のねらいや目標は生活の場面や人間関係や環境などの多くの部分でつながりの深いことが分かった。しかし、幼稚園や保育所は小学校以降の教科の先取り学習(準備期間)ではないので、一斉に強制して取り組むものではない。小学校以降の生活や学習の基盤に留意しつつ、幼児期にふさわしい生活を見通して行うことが必要である。教育者には幼児・児童の発達段階に応じて人や環境とのつながりを感じさせ、自主・自立や協調の態度や主体的な生活態度などの基礎を培うことが求められる。教育者自身がこのつながりを意識し、生活場面では主体的な生活者へと導く視点、子どもが自己肯定感を持ち他者や環境に配慮できる生活者へと導く家庭科的視点を持てば指導の方法がと変わり、子どものより良い生活への導きが出来ると思われる。現行の小学校家庭科は5・6年の科目であり1~4年には学習機会がない。しかし、子どもの生活は誕生した時からすでに始まっていて、どのような生活スタイルであっても子どもはその中で生活観を築き始めている。生活科(1・2年生)や道徳・理科・社会などは家庭科に関連する科目としてあげられる。これらの科目においても家庭生活的な視点の授業計画を望みたい。
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© 2013 日本家庭科教育学会
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