日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第59回大会・2016例会
セッションID: A3-2
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第59回大会:口頭発表
消費者教育に関する小学校教師用指導書の作成
*神山 久美
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抄録
<研究の背景と目的>
  消費者教育推進法の第11条第3項では、国や地方公共団体は、学校の授業その他の教育活動において適切かつ体系的な消費者教育の機会を確保するため、必要な施策を推進しなければならないとある。消費者庁では、「地方消費者行政推進交付金」の制度を設けており、地方公共団体の消費者教育推進に関する事業で用いることができる。近年ではこれを用いて、消費者教育に関する教材を作成する地方公共団体が増えており、家庭科で活用することができる教材も増加している。
   本研究では、地方公共団体の消費者教育の推進による教材作成の背景や動向を調査・考察し、その事例として、山梨県が小学校教員向けに発行した消費者教育の指導書の作成について報告を行う。
 <方法>
  地方公共団体における消費者教育の教材作成の背景や動向について調査した。小学校における消費者教育推進のために、山梨県において小学校教員向けの消費者教育の指導書を作成した。
<結果と考察>
  消費者庁の「地方消費者行政活性化交付金」は2008年度補正予算で予算化され、以降2013年度までに累計約326億円が都道府県に対し交付された注1)。「地方消費者行政活性化基金管理運営要領」では、交付金の事業内容として7つの内容を設けているが、「6.地域社会における消費者問題解決力の強化に関する事業」の中に、学校における消費者教育の推進が入っている。
  「地方消費者行政活性化交付金」の利用状況では、最も交付額が多いのが「消費者教育・啓発活性化事業」であった2)。平成2014年度以降も「地方消費者行政推進交付金」として、消費者教育の推進事業への交付が継続している。近年、消費者庁「消費者教育ポータルサイト」での地方公共団体の消費者教育に関する教材登録数は増加しているが、これらの交付金の影響があると考えられる。
   山梨県でもこの交付金を用いて、2015年2月に小学校教員向けの消費者教育の指導書「はじめての消費者教育~小学校における指導のために~」を発行した。県内の全小学校に教材を配布し、さらに、県民生活センターのwebサイトから、教材をダウンロードできるようにした。山梨県は「やまなし消費者教育推進計画」を2014年に策定しており、この計画の重点施策の一つが「小学校期・中学校期・高等学校期における消費者教育の推進」であった。本教材はその計画に基づき作成されたものである。
  消費者行政が学校向けに発行する教材は、契約や悪質商法に関するものが多かった。しかし近年では、消費者市民社会の構築などに関する内容も少しずつ増えてきた。消費者教育推進法で消費市民社会の考え方が明記され、また消費者行政担当職員や消費生活相談員に「消費者教育の体系イメージマップ」が認知されるようになってきたことがあると考えられる。このイメージマップは「消費者市民社会の構築」など4つの重点領域が示されており、消費者教育の領域が広いことを理解することができる。
   筆者は、このような消費者教育の動向を踏まえて、山梨県の消費者教育に関する小学校教師用指導書の作成を行った。最初に消費者教育推進法やそれを踏まえた「やまなし消費者教育推進計画」を説明した。家庭科をはじめとした消費者教育に関連する小学校の教科等の学習指導要領を提示し、小学校で行われている内容と消費者教育との関わりを明示した。特に、消費者市民社会に関する内容を導入した。例えば、「買い物の社会的な意味」やフェアトレードに関する授業案、公正で持続可能な社会について考えさせるような情報の紹介などである。家庭科をはじめとした授業で活用しやすいように、内容を工夫した。

 <引用文献>
注1)・注2) 総務省「消費者取引に関する政策評価:調査結果に基づく勧告」平成26年4月18日
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© 2016 日本家庭科教育学会
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