日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第59回大会・2016例会
セッションID: B3-5
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第59回大会:口頭発表
ESDを視点とした教師の気づき
クリティカル・リアリズムをてがかりとした家庭科教育での展開
*竹下 浩子
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抄録
【目的】
持続可能な開発のための教育(ESD)は、ユネスコにおいて、地球的視野で考え、様々な課題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組み、持続可能な社会づくりの担い手となるよう一人一人を育成する教育として位置付けられている。家庭科は、理科や社会科と並んで、ESDの内容を多く含む教科であり、実践的・体験的なESDの展開が期待される。しかし、2014年の日本家庭科教育学会の課題研究報告書「ESDとしての家庭科教育の可能性と役割」に見られるように、ESDを視点とした授業実践は多く行なわれているものの、実際にESDを意識して実践している教師は少ない。この要因として、ESDが理論として、教師のシャロウな(浅い)気づきだけにとどまり、実生活の中での教師のディープな(深い)気づきと実存するカリキュラムとのつながりが見出せないためと考えられる。本報告では、クリティカル・リアリズム(CR)を補助線として、教師のシャロウな気づきとディープな気づきから、ESDを視点とした家庭科教育の再構築とその課題を明らかにすることを目的とする。
【方法】
1.  まず、家庭科の方向性について、メタ理論のCRから従来の家庭科教育カリキュラムと実生活の事象とESDのそれぞれの特徴について整理し、3者の関係をアウトライン化する。
2.  次に、2015年9月に行なった教員免許状更新講習会で「家庭科におけるESD」を受講した幼稚園教諭、小・中・高等学校教諭の講習会後の感想文から、ESDについての理解や認識について、(1)シャロウな気づき、(2)ディープな気づき(3)その他に分類する。
3.  最後に、教師を対象としたチョコレートを題材としたESDの授業実践例の提示から、教師のディープな気づきを具体化し、従来の家庭科教育の再構築への提案を行なう。
【結果】
1.  CRはメタ理論にすぎないが、従来の家庭科教育カリキュラムと実生活における事象とのギャップをESDの視点から捉える上で、分かりやすく示すことができた。
2.  教師のESDについての理解や認識について、シャロウな気づきとディープな気づきを分類したところ、多くの教師が、ESDを使って、新たな視点で家庭科教育を捉え直すということに、共感していることが分かった。本報告では、この新たな視点で家庭科教育を捉え直すことに焦点をあて、その中でのディープな気づきについてさらに検討していきたい。
3.  カカオ豆・チョコレートは、ESDを視点とした家庭科の授業実践事例としてよく取りあげられている。これらの授業実践では、児童労働の問題やフェアトレードについて触れるため、家庭科では消費の内容を中心に展開されている。本報告のチョコレートを題材としたESDの授業実践例の提示では、教師が実際にカカオ豆からチョコレートを作るという体験活動を行い、教師自身の消費生活との関連からの気づきが見られたが、児童・生徒に教えたい内容については、精鋭する必要があると考えている教師もいた。従来の家庭科教育の再構築を考える上で、教師のディープな気づきを大事にする必要があるが、授業実践につなげるためには、さらに手続きを踏む必要がある。
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© 2016 日本家庭科教育学会
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