主催: 日本家庭科教育学会
会議名: 第59回大会・2016例会
開催日: 2016
【目的】
21世紀の情報基盤社会において生徒の問題解決能力やプレゼンテーション能力の育成が求められている。パフォーマンス課題とは「リアルな状況で、さまざまな知識や技能を統合して使いこなすことを求めるような課題」(松下2012、西岡2008)とされ、多様な資質・能力の評価方法や教育内容を位置づける。翻って高等学校家庭では、1960年学習指導要領告示より一貫してホームプロジェクトによる問題解決学習を担い、現代が求める能力・資質を育んできた。ホームプロジェクト実践の中で生徒が何を学び、どのような能力を身につけてきたのかを明らかにするために、どのように評価するかが重要かつ喫緊の課題である。本研究では、家庭基礎における高校1年生のホームプロジェクトの取り組みを対象として、パフォーマンス評価とその評価基準について検討することを目的とする。
【方法】
対象とする首都圏の普通科高校はスーパーサイエンスハイスクール(以下、SSH)指定校である。1学年は、SSHクラスが2学級とSSHクラスではない生徒(以下、非SSH)が6学級の計8学級から構成される。1学年8学級321人に、2015年度家庭基礎(2単位)においてホームプロジェクト(A4レポート5枚)を夏季休業課題とした。なお、テーマ設定は2学期の授業展開から食生活の課題に限定した。10月の授業1回(2時間連続100分)で全員が学級単位のポスター発表をし、相互評価を行った。ここでは、生徒が設定したホームプロジェクトテーマをSSHクラスと非SSHクラスで比較分析し、評価方法および評価基準としてのルーブリックを検討する。
【結果】
(1)テーマを最重点キーワードから12項目に分類した。多い項目から順に①摂取不足食材(野菜/魚/果物/豆/牛乳)64(19.9%)、②栄養(バランス/代謝)42(13.1%)、③体調不良(夏バテ/風邪/熱中症)35(10.9%)、④調理の能率・経済性(簡単料理/食費)29(9.0%)、⑤食生活を取り巻く環境(食品ロス/食料自給率/国産)28(8.7%)、⑥理想の体づくり(アスリート/筋肉/脳/骨)23 (7.2%)、⑦中食・外食・加工食品(コンビニ食/インスタントラーメン/菓子)23(7.2%)、⑧健康・流行食品(発酵食品/機能性食品/未来食)20(6.2%)、⑨体質改善(アレルギー/便秘/貧血/低血圧/口内炎)20 (6.2%)、⑩青年期における毎日の食事(朝食/弁当)18(5.6%)、⑪おいしさの科学15 (4.7%)、⑫食文化4 (1.3%)となった。高校生は食生活の課題を健康と結びつけて捉えているといえる。SSHクラス(n=80)は⑧健康・流行食品10(12.5%)、⑦中食・外食・加工食品10(12.5%)が非SSHクラスより有意に多かった(p<0.05)。
(2)生徒は前後半各40分間で各20件程度のポスター発表をまわり評価した。評価方法はテーマの独創性、実践の有用性、4つのプロセス(問題発見、計画、実行、反省評価)の設計性の3つの視点からそれぞれ3段階(3・2・1)で判定し、各自プリントに記入した。SSHクラスと非SSHクラスで比較したところ独創性(t(2829.388)=8.226,p<0.001)と有用性(t(2860.442)=6.757,p<0.001)の平均点に有意差がみられ、非SSHクラスにおいて多かった。
【課題】
教員ではなく生徒自身がパフォーマンス課題を設定するため、ふさわしいテーマ設定ができたかという点からも評価する必要があった。相互評価は項目の尺度が曖昧であったことと時間内に全員分を聞くことが難しく、正確に評価できないまま記載していた生徒が散見された。また、発表をする、発表を聞くという2つの学習体験から得たことを自己評価で とるべきであった。ルーブリックは問題解決能力についてホームプロジェクトの実施、プレゼンテーション能力についてホームプロジェクトの発表を4段階で表わし、新たな視点を加え、パフォーマンス評価として再構築する。