抄録
【目的】
小学校家庭科の食生活学習は、栄養や調理に関して体系的に基礎から学ぶことができる内容となっており、日本の成人がある程度の栄養等に関する知識を有している現状からも、優れた内容であるといってよい。しかし、こうした成果もある一方で、理想的なあるべき姿を前提としていることから、家庭環境が厳しい児童にとっては、実生活と結びつきにくく、生きて働く力を十分に育成するまでには至っていないのではないかという課題がある。
そこで、本研究では、埼玉県下の一地域の小学校第5・6学年の児童を対象に、生活環境や食生活実態、食生活に関する学習内容の定着度等について調査を行った。本研究は、最終的に現状の食生活カリキュラムの課題を明らかにすることを目的としているが、本報告では児童の食に関する実態を家庭の状況等を含めて詳細に明らかにすることを目的とする。
【方法】
1.対 象 者:埼玉県I町の4小学校(有効回答率95.9%)
第5学年 551名(男子291名 女子236名 不明24名 )
第6学年 529名(男子274名 女子235名 不明20名 )
2.調査時期:2016年1月
3.調査方法:家庭科もしくは学級活動の時間に家庭科担当教員または担任が説明し、自記式質問紙調査を実施し、即時回収した。
4.調査内容:
(1)子どもたちの生活環境
新聞購読、インターネット環境等に関する17項目から子どもたちの生活環境や家庭の文化的水準を測る質問を設定した。
(2)子どもたちの食生活実態
朝食摂取状況、野菜の摂取頻度、食事作りへの参加度合等に関する17項目から、子どもたちの食生活の実態を把握する質問を設定した。
(3)子どもたちの食生活に関する学習内容の定着度
現在の小学校家庭科の食生活に関する学習内容からなる16の質問項目を用いて子どもたちの知識の定着度を確認した。
【結果及び考察】
(1)子どもたちの生活環境について
家庭の情報環境から文化的水準を見ると、新聞については全体の59.1%が定期購読をしていた。これはMMD研究所WEBサイトが行った「自宅での定期購読契約率」(2012年25歳~49歳の男女611名)の調査結果、57.3%と同程度である。また、インターネット環境について、その媒体をパソコンとしている世帯は全体の70.3%、スマートフォン69.9%で、内閣府の行った消費動向調査(2015年)結果でのパソコン78.0%、スマートフォン60.6%と比較するとインターネットの利用状況は同程度で、スマートフォンの使用率が若干高い結果となった。対象児童の家庭環境は、ほぼ全国の平均と考えてよいだろう。
(2)子どもたちの食生活実態
食事の摂取状況に関して、全体の約91%の児童が毎日朝食を食べていた。これは、2015年全国学力・学習状況調査における調査結果95.6%(全国平均)を下回っている。また、食事内容について、小学校の食生活学習では、野菜を多く摂取するように指導しているが、毎日3回以上食べている児童は全体の3分の1程度(33%)であった。さらに、子どもたちの朝食内容をA「3つの食品群がそろっている」、B「3つの食品群の1つが欠けている」、C「1つの食品群のみ」に分類すると、A34.7%、B32.4%、C28.8%、未記入4.1%となり、朝食は摂取していても約6割は食事内容に問題を抱えていることが分かった。
次に、食事作りに関して、全体の約93%の家庭では、食事は主に母が作っていた。子どもたちの食事作りへの参加は、「週2回以上手伝っている」と回答したのは全体の半数程度(55.6%)であり、まずまず積極的と言える。しかし、その多く(76.2%)は「配ぜん」を手伝うことで、調理活動はあまり行っていない。
(3)子どもたちの食生活に関する学習内容の定着度
学習内容のうち、食品を3つの食品群に分類する問題では、「おもに体をつくるもとになる食品」の定着度が悪かった。