日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第59回大会・2016例会
セッションID: P04
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第59回大会:ポスター発表
ESDの視点を導入した小学校家庭科における食分野の授業の検討
~「ご飯とみそ汁」の題材に焦点を当てて~
*中村 美咲川邊 淳子
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抄録
【研究の背景および目的】
    ESDは,Education for Sustainable Developmentの略で,「持続可能な開発のための教育」と訳される。ESDとは,現在,私たちを取り巻く社会における,環境,貧困,人権,平和,開発といった,様々な諸問題を自らの問題として捉え,身近なところから取り組むことにより,それらの課題の解決につながる新たな価値観や行動を生み出すこと,それによって持続可能な社会を創造していくことを目指す学習や活動を指す。家庭科においても,家庭生活を基盤として生じる様々は生活課題に対して,その課題の背景や原因を明らかにしつつ,それらを主体的かつ実践的・体験的活動を通して,解決に導いていくことが求められる。
   一方,2013(平成25)年,和食がユネスコ無形文化遺産として認められた。和食の基本となる,ご飯とみそ汁は,小学校家庭科においても重要な題材である。和食は五大栄養素をバランスよく摂取することができ,季節の食材を取り入れることによって,旬の食材についての理解を深めることができ,箸の使い方や配膳などの日本人として必要なマナーを身に付けることもでき,子ども達の健全な発達にも不可欠である。
   そこで本研究では,「ご飯とみそ汁」の題材にESDの視点,中でも「人を取り巻く環境に関する概念」と「人の意思,行動に関する概念」を導入した授業を実施し,その有効性について検討を行った。
【方法】
   授業対象者は,北海道教育大学附属旭川小学校5年生75名(2クラス),授業は全12時間構成で,授業実施日は,2015(平成27)年11月~2016(平成28)年2月であった。題材に入る前と題材学習終了後の調査だけでなく,毎回の授業を振り返っての6枚のワークシートのカテゴリー分析も行った。
【結果および考察】
   1.題材構成におけるESDの視点の導入:「相互性」「多様性」「有限性」「責任性」「連携性」の5つの視点を,ESDの視点として導入した。課題解決のためには,ひとり学習からグループ学習へ,さらに高まった実践力を発信・発揮することを目指せるように配慮した。 
   2.事前および事後調査結果:事前調査において,実際食する頻度についてみてみると,朝食で毎日は,ご飯は60.0%,みそ汁は26.7%であった。それが,事後調査で,これからどれくらいの頻度で食べてみたいかという質問をしたところ,毎日と回答した児童は,ご飯は68.0%,46.7%に上昇した。事前と事後の調査を比較したところ,ご飯をおいしく炊く条件として8項目すべてで上昇したが,特に,吸水時間で33.3%,火加減で32.0%上昇し顕著であった。また,みそ汁をおいしく作る条件としては,8項目中2項目では下降したが,6項目で上昇し,みそを入れるタイミングで28.0%,火加減で22.7%上昇し顕著であった。さらに,ご飯の炊き方では,正解が7名から38名に,みそ汁の作り方では,正解が20名から48名に増加したのも特徴的であった。
   3.WS分析から見る結果:最初に,「和食の良さ」について児童に尋ねたところ,「栄養バランスの良さ」に関することが47名,「味」に関することが7名,「文化」に関することが5名となった。和食についての学習に入る前に五大栄養素についての学習を行っていたため,「五大栄養素がすべてとれる」「栄養バランスがいい」といった,栄養についての回答が多くなったと考えられる。しかし,もう一度同様な質問をしたところ,「栄養」に関すること40名,「味」に関すること27名,「文化」に関することが12名となり,「味」や「文化」に関する記述が増加した。
   以上の結果から,様々な食材を実際に味わい,専門家の方々の指導も導入し実際に五感を通した豊かな体験をしていくことで,和食の栄養バランスの良さのみならず,食料問題や日本の伝統的文化のあり方についても,ESDの視点からの考えが広がり深まったことが示唆された。
 
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© 2016 日本家庭科教育学会
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