抄録
はじめに
弘前大学教育学部における教育実習は学部1年次から4年次までの全ての学年で履修することになっており、中でも3年次集中実習は中核的な位置づけにある。3年次では、前期Tuesday実習(火曜日に2時間を5回、各教科の学生が中学生に対し授業を行う)→集中実習→後期Tuesday実習と1年間を通して実習を行なうため、実習生の教師力向上が期待できる。
本研究では、附属中学校におけるTuesday実習で家庭科を履修した中学生を対象に食生活に関する授業を行い、生徒の変容を調査すると共に、それを指導する実習生の教師力の変容との関わりを検討することを目的とした。
方法
1.生徒の変容
【調査時期】5~6月(前期Tuesday実習。以下前期)、10~12月(後期Tuesday実習。以下後期)に行った。
【調査対象】Tuesday実習の家庭科を選択した本学部附属中学校の生徒とし、前期15名、後期15名を対象とした。
【調査内容及び方法】食事内容、課題把握とその達成状況などをワークシートに記入させ、それらを分析した。
2.実習生(指導者)の教師力変容
【調査時期】アンケートは2015年4月~12月の間に5回実施した。
【調査対象】本学部3年次学生(実習生)3名とした。
【調査内容及び方法】アンケート調査により教師として「もっとできるようになりたいこと」などの記述や、VTR撮影により授業中の発言内容を調べた。
結果および考察
食生活に関わる前期指導計画を作成・実施し、前期の実施結果を踏まえ、順序の入れ替えや学習内容の追加を行ない後期指導計画とした。
1.生徒の変容
1) 摂取食品数の変容
事前調査の食品数の平均は前期26.7食品、後期19.9食品、事後調査は前期24.3食品、後期22.2食品となった。
2) 課題把握と課題達成
課題把握については、「自ら把握できた」は前期6人、後期15人、「実習生の働きかけにより把握できた」は前期4人、後期0人、「具体的に把握できなかった」は前期5人、後期0人であった。課題達成については、「全て達成できた」は前期10人、後期10人、「一部を達成できた」は前期2人、後期5人、「達成できなかった」は前期3人、後期0人だった。後期に受講した生徒の方が課題把握と課題達成はともに良好だった。
3) 前期と後期のカテゴリー分類の比較
それまでの学習を踏まえて最後の時間に記載させた「今後気を付けたいこと」をカテゴリー分類したところ、6つが得られた。前後期共に「栄養バランス」の記述が最も多かった。また、前期は抽象的な記述が多かったが、後期は具体的な記述に変化した。
以上の結果から、後期の方が生徒への効果が大きかった。
2.実習生(指導者)の教師力変容
1) アンケート調査の分析
高木を参考に実習生が記述した「もっとできるようになりたいこと」「できるようになったこと」を分類した結果、「授業準備・実践」「生徒理解」の2つのカテゴリーが得られた。このうち「授業準備・実践」が多かったため、さらに「授業構成力」「教材研究力」「授業展開力」の3つに分類した。実習が進むにつれて具体的で学習者を意識した記載に変化した。また、実習生は自身の能力向上を自覚していた。
2) 前期と後期で実施した同一授業内容の分析
前期と後期では、主に「時間配分」と「指示の仕方」に相違が見られた。VTR記録から、「時間配分」では、後期の方が課題の記入時間が長かった。これは、後期の方が課題把握について高率になった1要因と推察された。「指示の仕方」は、前期は「課題を記入してください」が、後期では「これから課題を記入してほしいのですが、何を改善するのか、具体的な食品名を使って具体的に書いて下さい」という指示に変わった。的確な指示だったため、生徒は活動内容を理解し、行動に移すことができた。
以上より、生徒の変容と指導者の教師力とは関わりがあることが示唆された。今後は、実習生の教師力向上に関わる背景や要因等について検討する予定である。