抄録
【目 的】平成20(2008)年告示の中学校学習指導要領(文部科学省,2008)により,家庭科における子どもとふれ合う活動が必修化されて以降,ふれ合い体験の実践や研究が蓄積されている。しかし,その研究の多くは中学生に認められる効果を検討しており,1-6歳児の行動を分類した研究(天野,2014)はあるものの,幼児の学びを検討した研究はほとんど認められない。金沢大学学校教育学類・附属学校園研究推進委員会に属する技術・家庭科小委員会では,2012(平成24)年度にみそ汁作りを中心とする幼小中連携活動(尾島ら,2014)を展開した。活動に参加した小学生と中学生の学習内容の解明(滝口ら,2014)に続き,本研究では活動を通しての幼児の意識を明らかにすることを目的とする。
【方 法】活動参加者:金沢大学学校教育学類附属幼稚園年長児2クラス49名,附属小学校3年生1クラス33名,附属中学校3年生1クラス38名であった。活動内容:年長児4名程度,小学生,中学生各2名程度でグループが構成され,年長児は「みそ汁の具をちぎる」活動を,小学生は「みそ汁の具のちぎり方を年長児に教える」「みそ汁をよそう」活動を担当し,中学生はサポートをした。活動日:平成24(2012)年12月11日に開催された。年長児の振り返りは,幼小中交流会終了直後に各クラスにおいて実施された。手続き:振り返りにおいては,2クラスともに意見のある幼児が挙手をし,担任教諭の指名の後に1人ずつ発言した。内容はデジタルビデオで録画され,録画記録を文字化したものを分析対象とした。
【結果と考察】まず,担任教諭から感想を問われた時に最初に言及した内容について,「楽しかった・面白かった」が47%(23名),「おいしかった」は17%(8名),「難しかった」は6%(3名),「みそ汁の材料」は12%(6名),「小学生・中学生」は14%(7名),「その他」は4%(2名)であった。言及した内容の比率に有意差が認められ(χ2 (5, N = 49) = 35.61, p < .01),「楽しかった・面白かった」が他の5カテゴリよりも高かった(p < .05)。次に,「楽しかった・面白かった」と評価した具体的内容は,「作る・ちぎる・回す」(みそ汁を作る,白菜をちぎる等)が61%(14名),「小学生・中学生」(中学生のお兄さんがこちょこちょしてきた,小学生とお料理するの初めて等)は26%(6名),「全部」は4%(1名),「その他」は9%(2名)であった。言及した内容の比率に有意差が認められ(χ2 (3, N = 23) = 18.22, p < .01),「作る・ちぎる・回す」が「全部」及び「その他」よりも高かった(p < .05)。約半数の年長児が活動を通してポジティブな意識を抱いており,その6割が活動に対する評価であり,3割が活動を共にした年長者に対しての評価であった。本研究及び他の研究の結果を踏まえ,幼児とのふれ合い体験活動における「幼児の活動のねらい」を提起していくことが求められよう。
引用文献
天野美和子 2014 幼稚園・保育園における幼児と中学生との“ふれ合い体験活動”を通しての幼児側の経験 日本家庭科教育学会誌,57,196-207.
文部科学省 2008 中学校学習指導要領 東山書房
尾島恭子・綿引伴子・滝口圭子・松田洋介・橋本正恵・中田泉・西多由貴江 2014 大学・附属学校園の幼小中連携活動の検討(1):みそ汁作り・お弁当交流会の事例から 金沢大学人間社会学域学校教育学類附属教育実践支援センター紀要教育実践研究,40,27-36.
滝口圭子・綿引伴子・尾島恭子・松田洋介・橋本正恵・中田泉・西多由貴江 2014 大学・附属学校園の幼小中連携活動の検討(2):みそ汁作り・お弁当交流会についてのインタビュー調査の結果から 金沢大学人間社会学域学校教育学類附属教育実践支援センター紀要教育実践研究,40,37-47.