抄録
【目的】『食教育の研究』の授業内で実施した「食生活に関する省エネ行動変容」の自由研究課題に関し,班ごとに研究調査を行った結果から,効果的な省エネ行動変容のための教育や情報提供のあり方を考察することに加え、調べ学習を行うことによる省エネ行動変容効果を確認することとした。自由研究課題設定に関しては、班ごとに,自分の暮らしや家族の取り組みから現在できていない省エネ行動項目を抽出し,その中から行動変容の余地があるものを自由に選択し,決めたテーマに沿って下記の通り班ごとに取り組んだ。
【方法】対象者は,東京家政大学栄養学科家庭科教職課程必修科目「食教育の研究」の平成27年度履修者計66名とした。5人もしくは4人で1班を構成し,14班に分け,班ごとに自由研究を実施した。まず、食生活に関する省エネ行動を,自分の暮らしや家族の取り組み,これまでにメディア等で見たものからできる限り抽出し、省エネ行動リストを作成した。そこから、自由研究のテーマを決定し、調査を開始した。調査は、文献調査後、アンケート等による実施頻度と行動の阻害・促進要因を追究した。その後、テーマとした行動の省エネ行動効果測定を行い、得られた結果から取り組みを実施及び定着させるために必要なことを分析し、効果的な教育方法を検討した。さらにその教育方法を実施し、効果を評価した。最終的に、出来上がった自由研究はレポートにまとめ、パワーポイントを用いて授業内で発表を行った。
【結果】食生活に関する省エネ行動に関する行動変容効果についてテーマを自由選択させたところ,「買い物」に関する行動を選択した班が4班,「調理」が8班,「片付け」が2班となり,「調理」に関する行動が多く選択されていた。このことは,より身近で,関心の高い分野での省エネ行動が選択されやすいことを示唆していると考えられる。さらに、現在実践できていない行動項目を選択したことから,いずれの行動もまずは認知度を上げるための基本的な情報提供が有用だと結論付けていた。その上で,「買い物」「調理」「片付け」のそれぞれの場面で,情報提供のタイミングは異なり,「買い物」に関しては買い物時に情報提供することが重要であるのに対し,「調理」「片付け」では,事前に情報提供を行うことが重要であることが示唆された。また、食生活にとっての省エネ行動は,食生活におけるそれぞれの場面で必須事項ではないことから,「買い物」においての「価格」,「調理」においての「おいしさ」,「片付け」においての「簡便さ」といった本来の目的に沿う形で,自己の選択肢の中に省エネに関する基準が入ることが重要であると考えられた。このことからも、省エネ行動変容を促すためには,それぞれの行動に関する基礎知識及び経験が必要であり,その上で,そもそもの行動を阻害せず,行動別に見合ったタイミングで情報提供を行うことが重要であると推察された。すなわち,省エネ行動を独立させて教育を行うのではなく,生活の一部であることを認識させ、一連の流れの中で実践につながるような教育を行うことが大切であると考える。今回の調べ学習を通して,特に「調理」行動を選んだ班では,多くの班員に行動変容効果が見られたことが報告されたことから,実際の経験,省エネ行動効果の理解に加え,相手に自分の知識を伝えることでさらに理解が進んだと考える。こういった観点からも,省エネ行動を主体的にとらえることができる自由研究課題は今後の省エネ教育においても有用であることが示唆された。