抄録
【目的】我々はこれまでに,省エネ教育を行うことにより,エネルギー・水使用量及びごみ廃棄量の顕著な削減効果ならびに行動変容効果が得られることを報告してきた。一方、個々人の省エネ行動変容ステージモデルの段階に応じて、教育効果に違いが見られ、環境問題への関心が低いグループにおいては教育効果が得られにくいことから、主体的に環境への関心を持たせる教育が必要であることが示唆された。
そこで本研究では,地球環境問題を主体的にとらえるために,「地球温暖化の原因とその影響について理解する」,次に「自分の考えを文章としてまとめることを通して,省エネ行動の大切さに気付く」ことをねらいとし,「省エネ行動」を体系的に学べるテキスト『省エネ行動スタートBOOK』を使用し、新聞作成課題を授業に導入した。実際に学生が作成した新聞からどのような傾向が見られるかを分析することとした。
【方法】対象者は東京家政大学栄養学科の家庭科教職課程必修科目「食教育の研究」の平成27年度履修者計66名,実施期間は10月とした。新聞作成課題として,地球温暖化の原因やその仕組み,そしてどんな問題が起きているのか,どうして省エネが大切なのかをまとめさせた。
今回対象とした学生は家庭科教職課程の受講生であることから,将来学校などで教鞭を取ることを期待し,生徒としての立場ではなく,教師の立場に立ち,学級通信として出すことを想定した課題とした。また,学生に提示した新聞見本のタイトルは,「地球環境通信」であったが,新聞のタイトルは自由に設定するように指示した。
提出された新聞課題をもとに,新聞タイトル,記事テーマ,編集後記を分析し,どのようなことが取り上げられているか傾向を把握し,授業に導入することの効果を検証することとした。
【結果】新聞タイトルに関しては,「省エネ」,「エコ」,「食と省エネ」,「その他」の4種類に大きく分類された。多く見られた順に,「省エネ新聞」や「省エネ通信」といった「省エネ」をテーマとしたものが32%,「エコ新聞」や「地球環境新聞」といった「エコ」をテーマにしたものが27%,「食エコ新聞」など「食と省エネ」をテーマにしたものが17%,「学級通信」など「その他」が24%となった。省エネという言葉をタイトルに使った新聞が圧倒的に多く,直接的にタイトルで内容を示すものが多く見られた。
記事テーマに関しては,「省エネ(省エネの定義や大切さ)」,「エコ(地球温暖化や地球環境問題の解説)」,「食と省エネ(食と省エネ行動の関係)」,「具体的な省エネ行動(生活全般もしくは食に関する具体的な省エネ行動)」,「その他」の5種類に分類された。1つの新聞の中に2~3テーマを設定している学生が多く,第1テーマとして多かったのは,「省エネ」が41%,次いで「エコ」が36%,「食と省エネ」が18%,「具体的な省エネ行動」が5%であった。第2,第3テーマも含めテーマ全体での頻出度を見ると,「具体的な省エネ行動」が58件と多く,次いで「エコ」37件,「省エネ」37件,「食と省エネ」26件,「その他」5件となった。ほとんどの学生が,地球環境問題や省エネ行動の大切さなど大きなテーマを取り上げた後に,実際の省エネ行動を伝える手法をとっていた。
さらに,編集後記は,自分自身で省エネ行動を実施しようという決意表明が書かれたものを「コミットメント」,先生の立場もしくは普及促進の立場で普及啓発を促すものを「普及啓発」,それ以外を「その他」とし3種類に分類した。結果,「コミットメント」が65%,「普及啓発」が30%,「その他」が5%となった。ここからも,本課題が自主的な取組みにつながっていることが分かる。次いで,先生の立場として学級新聞を作るようにと指示したことから,普及啓発を促すコメントが多く見られた。
以上より,新聞作成課題を通して,学生が主体的に省エネ行動をとらえることができるようになっていただけでなく,省エネの普及啓発への意欲に結びつくことが確認された。