2019 年 70 巻 11 号 p. 728-738
我が国における共働き世帯数は一貫して増加傾向にあることから, 夫婦の家事分担に関する研究蓄積は豊富にあるものの, 夫以外の家事の担い手である子どもの家事遂行に焦点を当てた研究は, 相対的に少ないのが現状である.
そこで本研究は, 9歳から18歳以下の子どものいる核家族を対象に, 子どもの家事遂行を規定する要因について, 男女別にパス解析を行い検討した. その結果, 男子の家事遂行を規定する要因は, 父親の家事遂行と母親との関係満足, 母親の学歴であり, 父親が頻繁に家事を行うほど, 母親との関係に満足しているほど, 母親の学歴が高いほど, 男子は積極的に家事を行うことがわかった. 他方, 女子の家事遂行は, 帰宅時間と母親の性別役割分業意識によって規定されており, 帰宅時間が遅いほど, 母親が性別による役割分業に対して否定的であるほど, 女子は家事を行わないことが確認された.
本研究で得られた結果から, 男子は, 父親と母親の働きかけによって家事を頻繁に行うようになるが, 女子は自主的に家事を行うことが明らかになった. さらに, 高学歴あるいは, 性別役割分業を否定的に捉える母親は, 男子や父親に対して家事を行うように働きかけることによって, 家事におけるジェンダー平等を図っている可能性が示唆された.