日本家政学会誌
Online ISSN : 1882-0352
Print ISSN : 0913-5227
ISSN-L : 0913-5227
報文
乳幼児期における要求表現にみられる葛藤克服方略としての迂回
寒河江 芳枝
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 71 巻 6 号 p. 370-381

詳細
抄録

 本研究は, 一児の観察から提起した2歳の後半に間接的な諸表現の兆しが発生し, 3~4歳では間接的な諸表現として「迂回」が表われるという前研究の仮説が, 幼稚園における複数の乳幼児においても支持されるかどうかを検討する.

 方法としては, ビデオ及び参与観察によった. 具体的には, 子どもの葛藤する姿が見えやすい場面として保育者の片付けの言葉がけから次の活動の準備までの移行場面に注目し, その中で見られる子どもの行動をビデオ及び参与観察によって記録した. 毎回観察が終わった時点で保育者との振り返りの時間を設け, 聞き取りの内容を結果の解釈や考察を行う際に活用した. 観察期間は, 2013年6月~7月である. さらに, 2014年1月~3月に追加観察を行った. 対象児は, 幼稚園の満3歳児20名 (女児3名, 男児17名), 観察は週に1回行った.

 本研究の結果から明らかになったのは, 以下の2点である. 1点目は, 対象者20名全員に迂回行動が見られた点である. 本研究では, 2歳2ヶ月から3歳2ヶ月の子どもを対象に観察したため対象児の年齢は1年ぐらいの幅があったが, 迂回行動の出現した年月では先行研究と一致した. 2点目は, 迂回の種類についてである. 家庭における一児を対象にした先行研究結果よりも, 集団生活の子どもを対象にした本研究の結果の方が迂回の種類がより多く表われた.

著者関連情報
© 2020 一般社団法人 日本家政学会
前の記事 次の記事
feedback
Top