本研究では, 栽培における窒素追肥方法の違いが, 硬質小麦「ゆめかおり」の製パン適性に及ぼす影響を調べた. 硫酸アンモニウム (硫安) の畦間散布による窒素追肥を施用した小麦 (ゆめかおり1), あるいは硫安の畦間散布と尿素の葉面散布との併用による窒素追肥を施用した小麦 (ゆめかおり2) から, それぞれタンパク質含有率を約16%に調整した60%粉を試験に供した. 製パン試験において, 「ゆめかおり1」から作られたパンと比較して「ゆめかおり2」の場合では, 比容積は有意に大きく, 外観と内相の官能評価の評点は高かった. さらに, テンシプレッサーによるパン内相の物性評価において, 「硬さ」と「付着性」の値は有意に低かった. そこで, 小麦粉の糊化粘度特性を調べたところ, 試料間に有意差な差は認められなかった. しかし, 小麦粉中のグリアジンに対するグルテニンの比率は, 「ゆめかおり1」と比較して「ゆめかおり2」では有意に高かった. これらの結果から, 硫安の畦間散布と尿素の葉面散布による窒素追肥で得られた「ゆめかおり」は, グリアジンに対するグルテニンの比率が高くなることで, 製パン適性は向上することが示唆される.