日本家政学会誌
Online ISSN : 1882-0352
Print ISSN : 0913-5227
ISSN-L : 0913-5227
72 巻 , 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
報文
  • ―長期追跡研究より―
    佐藤 宏子
    2021 年 72 巻 2 号 p. 59-73
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/26
    ジャーナル フリー

     本研究では, 1982年から2014年までの32年間に農村直系制家族に生じた世帯形成と世代更新の世代的変化を明らかにする. 本稿では4時点パネルデータの239人 (239世帯) を「MC-1」 (1945~54年に結婚), 「MC-2」 (1955~64年に結婚), 「MC-3」 (1965~79年に結婚) に区分し, 結婚コーホートによる比較分析を行った. 本研究から次の知見が明らかになった. 第一に, 2014年の次世代更新率は「MC-1」70.1%, 「MC-2」37.9%, 「MC-3」26.0%で, 「MC-1」は「MC-2」と「MC-3」よりも有意に高い. 第二に, 「MC-1」の世帯形成には直系的な世代継承が維持されているが, 「MC-2」と「MC-3」では直系的な世代連鎖の持続が困難になっている. 第三に, 世帯形成の主要経路は, 「MC-1」では「子世代更新」へ向かう次世代更新の経路であるが, 「MC-3」では「更新未確定」に留まる経路に変化している. 第四に, 世代更新を有意に進める要因は「MC-1」 (1982, 1993, 2014), 「農業を子どもに継がせようと思っている」 (2005, 2014), 世代更新を困難にする要因は夫の出身地「岡部町」 (1993, 2005), 世帯職業「専業農家」 (1993), 長男の同居扶養規範「どちらともいえない」 (2014) である. 第五に, 地域社会の産業構造や就業構造の変化, あとつぎの結婚難の深刻化によって世代更新が困難になる中で直系制家族を志向し続けると, 未婚のあとつぎが親世代と同居する「更新未確定」持続パターンが主要な経路となり, 世帯形成は停滞する.

  • 郡山 貴子, 小川 歩実, 大田原 美保, 大石 恭子, 香西 みどり
    2021 年 72 巻 2 号 p. 74-85
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/26
    ジャーナル フリー

     野菜ゲルの新規食材としての有用性について評価するため, 種々の加熱処理, 冷凍処理, および凍結乾燥処理を施しそれらの耐性を検討した. その結果, ニンジンをピューレ状にしてジェランガムでゲル化させたニンジンゲルは湿式・乾式いずれの加熱にも耐性を有するだけでなく, 冷凍後も加熱耐性を維持することがわかった. また, 種々の野菜 (ダイコン, ゴボウ, 小松菜, ジャガイモ, カボチャ, およびレンコン) についても野菜ゲルに適した配合を決定し, いずれの野菜ゲルも冷凍の有無によらず調味液加熱が可能であることが認められた. さらに, 種々の野菜ゲルを凍結乾燥しても外観を損なわないことが明らかとなり, 保存性の高い食材としての利用が期待できた. 以上のことから, 本野菜ゲルは調理性および保存性の観点から日常の調理食材に加えて非常時の食材としての利用, さらに介護食等への利用が可能な汎用性の高い新規の食材であることが示された.

  • 小田木 美保, 飛田 啓輔, 大越 三登志, 田中 研一, 武田 文宣
    2021 年 72 巻 2 号 p. 86-94
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/26
    ジャーナル フリー

     本研究では, 栽培における窒素追肥方法の違いが, 硬質小麦「ゆめかおり」の製パン適性に及ぼす影響を調べた. 硫酸アンモニウム (硫安) の畦間散布による窒素追肥を施用した小麦 (ゆめかおり1), あるいは硫安の畦間散布と尿素の葉面散布との併用による窒素追肥を施用した小麦 (ゆめかおり2) から, それぞれタンパク質含有率を約16%に調整した60%粉を試験に供した. 製パン試験において, 「ゆめかおり1」から作られたパンと比較して「ゆめかおり2」の場合では, 比容積は有意に大きく, 外観と内相の官能評価の評点は高かった. さらに, テンシプレッサーによるパン内相の物性評価において, 「硬さ」と「付着性」の値は有意に低かった. そこで, 小麦粉の糊化粘度特性を調べたところ, 試料間に有意差な差は認められなかった. しかし, 小麦粉中のグリアジンに対するグルテニンの比率は, 「ゆめかおり1」と比較して「ゆめかおり2」では有意に高かった. これらの結果から, 硫安の畦間散布と尿素の葉面散布による窒素追肥で得られた「ゆめかおり」は, グリアジンに対するグルテニンの比率が高くなることで, 製パン適性は向上することが示唆される.

  • 石井 和美, 小林 三智子
    2021 年 72 巻 2 号 p. 95-104
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/26
    ジャーナル フリー

     本研究では, 雑穀粉を主材料としてパンを調製するために, 増粘多糖類を添加した雑穀粉粉と生地の特性が製パン性に与える影響を検討した. 雑穀粉はホワイトソルガム粉を用い, 増粘多糖類は, MCE-4000, SFE-4000およびSE-50の3種を使用し, 糊化特性と生地の動的粘弾性を調べた. 糊化特性では, ピーク粘度, 最低粘度とパンの比容積の間に強い相関が認められた. 最終粘度との関係性は, 回帰分析の結果, 2次方程式で関係性が説明できた (R2=0.94). 糊化特性の結果からは, ピーク粘度が高くその後の粘度低下が低く, より最終粘度が高いとパンの膨らみが良いと考えられた. 動的粘弾性の温度依存性では, 初期の貯蔵弾性率 (G′0) と比容積, かたさの間に相関が認められ, G′0が高いほど比容積が大きく軟らかいパンが調製できることが示唆された. 最適なG′0の範囲は今後の検討課題である.

シリーズ くらしの最前線 134
feedback
Top