日本家政学会誌
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1920年代から1930年代における山本キクの「衣服科」構想 : 「服装文化」に着目して
清重 めい
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2022 年 73 巻 11 号 p. 635-644

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抄録

 本稿の目的は, 裁縫教育を技術習得だけでなく, 衣類全般を扱う教育として再編する議論の一つとして山本キクの「衣服科」構想の内実を明らかにすることである. そのために, 1920年代から1930年代にかけての山本キクの「衣服科」構想の内実を描いた上で, 黒川喜太郎や酒井のぶ子が展開した類似の論と比較し, その構想の特徴を明らかにしようと試みた. 以上の検討から明らかになったことを3点あげる. 1点目は, 山本キクの「衣服科」構想は, 婦人に求められる能力の変化・裁縫教育の授業時間数の減少等を受けて1920年代にはすでに構想され始めており, 衣服の目的として軽視されていた装飾としての側面に着目していたことである. 2点目は, 山本キクの「衣服科」構想は, ただ既製服を活用する方法・衣類を管理する技能の育成だけでなく, 「服装文化」という言葉に表れているように, 女児・女生徒たちによる身にまとうものへの気配りの習得も目指したことである. 3点目は, 「衣服科」「衣類科」構想には論者間に一定程度の相違点が見られ, 特に技術伝授に関してどの程度維持するかという観点において差が見られたことである.

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