2023 年 74 巻 1 号 p. 1-15
本研究では, 母娘関係に焦点を当て, 女子高校生が苦しいと感じる母親の態度への対処方略と, ストレスや自己分化度との関係を明らかにした. まず女子高校生を対象に質問紙調査を行い, 苦しいと感じる母親の態度と対処方略について論じる事の出来る尺度を自己作成した. それらの尺度と自己分化度, ストレス反応についての尺度から母娘関係を分析し, 考察を行った. パス解析により, 母親に意思を伝達し, 直接母親と向き合う対処を取る女子高校生の自己分化度は高いことが確認された. また母親との間の葛藤に対して諦め・過剰反応の対処を取る女子高校生の自己分化度は低く, 不機嫌・怒り, 抑うつ・不安感情は高いことが示された. 母親に意思を伝え, 理解してもらおうと働きかける対処は, 適切な形で母親からの情緒的分離が果たされていると予測された. 一方, 母親との葛藤に対する過剰な反応や諦めの対処は, 母親に理解されたいと強く思うものの受容してもらえないという, 不安定でアンビバレントな母娘関係が示された. また本研究では, 母親に対する葛藤への対処と自己分化度の高低は, 女子高校生の社会的役割に関する自己効力感, すなわち将来の展望を抱くことにも関わることが示された. 葛藤と向き合い, 母親との関係性を見つめ直すことは, 女子高校生にとって自立に向かう重要な課題であることが示唆された.