日本家政学会誌
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資料
「生活の営み」に関する実態調査
―カンボジア・シェムリアップ州都市郊外部の児童・生徒の場合―
楠 幹江山田 俊亮
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キーワード: カンボジア, 家庭科教育
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2025 年 76 巻 4 号 p. 176-185

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抄録

 カンボジアの教育は, 1970年代の内戦を経て, 現在も徐々に教育の充実化が行われているが, 教育プログラムの改善の必要性, 学校設備の不備, 教室数の不足等の課題が提起されている. 本研究は, カンボジアの小学生・中学生・高校生の「生活の営み」に関する実態調査を基に, 小学校・中学校・高等学校へと学校段階が上がるにつれて, 家庭科教育に関連する「生活の営み」がどのように変化するかを捉えたものであり, 以下の結果が得られた.

 (1) 登校前の仕事として, 小学生・中学生・高校生で共通しているのは, 「洗濯をする」, 「部屋の掃除をする」, 「母の仕事を手伝う」の3項目であった. また, 下校後の仕事としては, 「洗濯をする」, 「食事を作る」, 「食事の後片付けをする」, 「母の仕事を手伝う」の4項目であった. いずれも, 登校前, 下校後共, 家族の一員としての役割を果たしていることがわかった.

 (2) 「生活の営み」に関する個人の実践と要望に関する調査において, 小学生・中学生・高校生それぞれの間に有意差が示されたのは, 実践については, 「栄養素を知っている」, 「掃除ができる」, 「家の整理整頓ができる」の3項目であった. 要望については, 「洗濯の方法を習いたい」, 「栄養素を習いたい」, 「掃除の方法を習いたい」, 「家の整理整頓の方法を習いたい」の4項目であった. 小学生の実践が高い傾向があり, 要望も小学生が高くなった.

 (3) 「生活の営み」における校種別相違を明らかにするために, 判別的中率が高かった小学生・中学生における実践と要望を比較したところ, 実践項目である「栄養素を知っている」, 「洗濯ができる」, 「ゴミは決められた場所に捨てている」, 「料理ができる」, 「掃除ができる」および要望項目である「掃除の方法を習いたい」, 「料理を習いたい」, 「栄養素を習いたい」において肯定的意見は小学生の方が高い結果となった.

 以上の分析結果を踏まえて, カンボジアにおける家庭科教育においては, 「生活の営み」に関する知識・技術両面の教育内容の充実化が, 特にカンボジアの中学校・高等学校において必要と考えられる.

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