日本家政学会誌
Online ISSN : 1882-0352
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76 巻, 4 号
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ノート
  • 笹岡 恵梨, 三神 彩子, 赤石 記子, 木村 康代, 長尾 慶子
    2025 年76 巻4 号 p. 153-161
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/09
    ジャーナル フリー

     わが国におけるごみ排出量は年々減少しているが, 最終処分場の残余容量及び最終処分場の数も減少しており, 依然厳しい状況にある. 家庭ごみの削減は, 埋立地不足の問題に加え, 食品ロスやマイクロプラスチック問題, ひいてはCO2排出量削減に向けても重要な課題であり, 生活者一人ひとりの意識や行動変容が重要である. そこで本調査では, 家庭ごみ削減に焦点を当て, 生活者意識や実態を洗い出すとともに, 家庭ごみ削減の可能性を, ナッジ等の行動科学の知見を活用したワークを用いて実験的に検討することとした.

     家庭ごみ排出の現状とごみ削減の可能性を検討するため, 東京家政大学の2年生70名 (有効数) を対象に, 1週目は普段通りに生活しごみの計量を行った, 次に, ごみ削減に向けたワークを2週に分けて行い, ごみ削減を意識した生活によるごみの計量を行った. 併せてアンケート調査を実施した.

     実測調査から, 家庭ごみの約29%の削減を確認した. 内訳をみると, 可燃ごみ (生ごみ除く) は約33%, 生ごみは約15%, 紙類は約31%, プラスチック類は約25%減少した. アンケート調査から, ごみ分別の行動改善だけでなく, ごみを出さない意識・実践率の向上が見られた. さらに, コストや便利さよりもごみ削減や環境を優先する意識の高まりも認められた. 教育を通じてごみ削減を意識し, 実践することで, 家庭ごみ削減の余地があることが示唆された.

資料
  • ―中学校家庭科教員を対象とした全国調査―
    佐藤 佐織, 増渕 哲子, 堀内 かおる
    2025 年76 巻4 号 p. 162-175
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/09
    ジャーナル フリー

     近年, 食物アレルギー生徒が増加し, 学校では給食や調理実習等食を伴う場面において対応が求められている. 本研究では, 学校教育現場において, 「学校給食における食物アレルギー対応指針」, 「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」に沿った対応がどの程度行われているのかを調査・分析し, 学校における食物アレルギー対応の課題を明らかにすることを目的とする.

     全国調査の時期は2022年10~12月, 対象は全国47都道府県庁所在地中学校の家庭科教員で, 郵送及びインターネット回答方式による質問紙調査を実施した. 質問紙配布数は計2,490部, 回答数は585部, 回収率は23.5%だった.

     結果は以下の通りである. 全国の中学校で食物アレルギー対応委員会を設置していた学校は30.1%, 食物アレルギー生徒一覧表を全教員に提示している学校は83.2%, 食物アレルギー対応のための教員向け研修会を実施している学校は73.7%と, ガイドライン等に沿った対応が徹底されておらず, 学校給食提供方式による違いが見られた. また, 食物アレルギー症状を持つ生徒の割合を把握している家庭科教員は80.5%, 調理実習中にヒヤリハットを経験したことがある家庭科教員は10.6%と1割程度おり, 安全な食生活教育を行う上で課題が見いだされた.

  • ―カンボジア・シェムリアップ州都市郊外部の児童・生徒の場合―
    楠 幹江, 山田 俊亮
    2025 年76 巻4 号 p. 176-185
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/09
    ジャーナル フリー

     カンボジアの教育は, 1970年代の内戦を経て, 現在も徐々に教育の充実化が行われているが, 教育プログラムの改善の必要性, 学校設備の不備, 教室数の不足等の課題が提起されている. 本研究は, カンボジアの小学生・中学生・高校生の「生活の営み」に関する実態調査を基に, 小学校・中学校・高等学校へと学校段階が上がるにつれて, 家庭科教育に関連する「生活の営み」がどのように変化するかを捉えたものであり, 以下の結果が得られた.

     (1) 登校前の仕事として, 小学生・中学生・高校生で共通しているのは, 「洗濯をする」, 「部屋の掃除をする」, 「母の仕事を手伝う」の3項目であった. また, 下校後の仕事としては, 「洗濯をする」, 「食事を作る」, 「食事の後片付けをする」, 「母の仕事を手伝う」の4項目であった. いずれも, 登校前, 下校後共, 家族の一員としての役割を果たしていることがわかった.

     (2) 「生活の営み」に関する個人の実践と要望に関する調査において, 小学生・中学生・高校生それぞれの間に有意差が示されたのは, 実践については, 「栄養素を知っている」, 「掃除ができる」, 「家の整理整頓ができる」の3項目であった. 要望については, 「洗濯の方法を習いたい」, 「栄養素を習いたい」, 「掃除の方法を習いたい」, 「家の整理整頓の方法を習いたい」の4項目であった. 小学生の実践が高い傾向があり, 要望も小学生が高くなった.

     (3) 「生活の営み」における校種別相違を明らかにするために, 判別的中率が高かった小学生・中学生における実践と要望を比較したところ, 実践項目である「栄養素を知っている」, 「洗濯ができる」, 「ゴミは決められた場所に捨てている」, 「料理ができる」, 「掃除ができる」および要望項目である「掃除の方法を習いたい」, 「料理を習いたい」, 「栄養素を習いたい」において肯定的意見は小学生の方が高い結果となった.

     以上の分析結果を踏まえて, カンボジアにおける家庭科教育においては, 「生活の営み」に関する知識・技術両面の教育内容の充実化が, 特にカンボジアの中学校・高等学校において必要と考えられる.

シリーズ 新しい生活様式と家政学 3
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