抄録
α-ラクトアルブミン (α-La) にペプシンを作用させると, 未処理のα-Laとは異質の抗原性を有する高分子性物質 (HMF) が生成するが, HMFの生成に対するα-Laの酵素および化学処理の影響につき検討した.
トリプシソやキモトリプシンにより前処理したα-La, あるいはトリプシンやキモトリプシン処理したα-Laより得た, 分子量5,000以下のペプチドにペプシンを作用させても, HMFの生成はほとんど認められなかった.また, α-Laのペプシン処理により生成したHMFとその抗血清の反応は, ペプシン, キモトリプシンおよびトリプシン分解物の順で強く阻害された.
一方, α-LaのS-カルボキシメチル化やカルボキシル基のアミド化により, HMFの生成は著しく低下した。また, チロシンの水酸基のニトロ化では, 45%がニトPt化を受けるまではHMFの生産性は低下したが, 約68%の修飾により再び増大した.
さらに, HMFは, ペプシンやキモトリプシン処理において, 天然のα-Laよりも分解を受けにくいことが認められた.