日本家政学会誌
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天然染料の染着機構に関する研究 (第3報)
食品中の天然色素による染色とその堅牢度
木村 光雄中嶋 哲生清水 慶昭
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1990 年 41 巻 5 号 p. 421-426

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抄録

食品中に含まれているアントシアン系の天然色素を繊維用の染料として利用するための, 基礎データを得るとともに, それらの実用化を図ることを目的として本実験を行った.
アントシアン系色素の一つとして, 赤キャベツ中に含まれているルブロブラシンを使用し, 絹に対する等温吸着平衡や初期吸着速度を測定した.その結果, これらには合成染料の場合のような温度依存性が認められず, ルブロブラシン分子は絹繊維の非晶領域内でセグメントのすきまに水素結合のような分子間相互作用によって吸着しているのであろうと推定した.
また, ルブロブラシンのほかに紅心大根などからの抽出液も使用して, 絹および木綿を染色し, 洗濯堅牢度および日光堅牢度の改善を試みることによって実用化のための方法を検討した.その結果, 洗濯堅牢度改善のためにはタンニン酸の使用が好結果をもたらすことを認め, 絹には同浴処理で, 木綿には先媒染処理で, 金属イオンによる後媒染を併用して, 優れた洗濯堅牢度を得ることができた.さらに, 日光堅牢度の改善に関しては, クエン酸やカルミン酸などの染浴への添加と金属イオンによる媒染の併用が有効であることを知った.

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