総合健診
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[特集]
   総合健診におけるメンタルヘルス
わが国における従業員支援プログラム(EAP)の概況と実践
峰山 幸子入交 洋彦
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2009 年 36 巻 2 号 p. 229-235

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抄録
  当財団では、2004年よりEAP(従業員援助プログラム)としてメンタルヘルスサービスを事業化し、中国地方を拠点にもつ企業を中心にサービスを提供している。
  日本では、2000年のメンタルヘルス指針公示以降に事業場外資源によるケアへの期待が高まり、大きな発展を遂げてきたEAPであるが、アメリカ生まれのEAPとはそのサービスの目的や内容において相違点が見られる。アメリカのEAPは社員の業績や生産性の維持・向上を目的とし、労働者が意欲的に働くことを阻害するあらゆる問題に対応できるよう多岐にわたるサービスが提供されている。その中で、メンタルヘルス不調への対応はその一サービスという位置づけに過ぎない。それに対して、日本のEAPは同様の定義を掲げながらも、実際のサービスは企業のメンタルヘルス対策の支援が中核となっている実態がある。また、品質保証の問題においても、アメリカはCOA(Council on Accreditation)のような組織がEAPの機能評価・機関評価を行っているが、日本には客観的な立場からサービスの質を定期的に評価し継続的な改善を求めていくようなシステムが未だないと言わざるを得ない。アメリカにおけるEAPと日本におけるEAPでは、EAPが育ってきた背景や企業がEAPに求めるニーズが異なり、当然のことながらそれぞれの特徴があらわれてくるものと思われる。今後、EAP業界全体が企業ニーズに応えるべく発展を遂げるには、日本におけるEAPのあり方を見直し、課題を整理していくことが必要な段階に来ているといえよう。
  本稿では、労働衛生機関を母体とする当方でのEAP事業化の過程を報告するとともに、今一度、EAPという概念を整理し、日本におけるEAPの概況や今後の課題について言及したい。
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© 2009 一般社団法人 日本総合健診医学会
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